極限下で現れる人間の本性 ペリリュー戦漫画が問いかけるもの

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「ペリリュー 楽園のゲルニカ」2巻=白泉社提供
「ペリリュー 楽園のゲルニカ」2巻=白泉社提供

 激戦地・ペリリュー島で終戦後も取り残された日本兵たちに何が起きたか。戦争の現実を描いた「ペリリュー 楽園のゲルニカ」シリーズの最終巻が7月29日に出版され、本編が完結した。単行本累計は約80万部と「戦争もの」としては異例のヒットとなり、アニメ化も決まった。作者の武田一義さん(45)は、玉砕戦そのものだけでなく、「戦争を終わらせることの難しさ」を伝えたかったという。作品に込めた思いを聞いた。【國枝すみれ/デジタル報道センター】

一番描きたかったのは「玉砕後」

 「自分が最初に思っていたスケール感で描けて、よかった。読者に感謝します」

 武田さんはホッとした表情を浮かべた。漫画は人気が全くでない場合、思い描いたラストよりも早く完結させることもある。2016年に連載を始めたときは、米軍と日本軍との戦争が終わるあたりで終了となる可能性もあると考えていた。「戦争は始まったら終わらせることはなかなか難しい。最も伝えたかったそのことを、描き切るまで続けることができた」

 ペリリュー島は日本から南に3000キロ、太平洋上に浮かぶパラオ共和国を構成する小島の一つだ。日本の統治下にあった島には日本軍の飛行場があり、前線基地となっていた。1944年9月に上陸した米軍と2カ月以上の激戦の末、ペリリュー島の日本軍は玉砕した。そのため、武田さんの漫画は当初、「玉砕戦を描く戦争漫画」と紹介された。

 「でも描きたかったのは、激しい戦闘だけでなく、玉砕後に島に取り残された日本兵の運命全て、でした。そこは、それまでの戦争漫画であまり描かれてこなかった部分でもありました……」

 武田さんは75年生まれだ。戦争に特に興味があったわけではない。2015年、天皇、皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)が戦没者の慰霊のためペリリュー島を訪問したときの報道で、初めて島の存在を知ったほどだ。

 ペリリュー島にいた日本軍兵士約1万500人のほとんどが死んだ。しかし、玉砕後も戦いは続き、終戦後の47年4月、密林に潜伏していた34人が米軍に投降した。戦後70年の雑誌の企画でペリリューを題材に単発の漫画を描くことになった武田さんは、「玉砕の島 ペリリュー」の著者で、生還者の取材を続けていた太平洋戦争研究会の平塚柾緒さんに話を聞きに行った。

 「衝撃を受けました。取り残された兵士の実情を、僕は全く知らなかった。…

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