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「目標は愛ちゃんじゃない」 打倒「王国」目指してはや10年

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女子シングルス準々決勝、ショットを放つ伊藤美誠=東京体育館で2021年7月28日、久保玲撮影
女子シングルス準々決勝、ショットを放つ伊藤美誠=東京体育館で2021年7月28日、久保玲撮影

 10年前の出会いは記者に鮮烈な印象を残した。2011年8月、大阪であった小学生による卓球の国際大会「東アジアホープス」。「見ておいて絶対に損はないから」。知り合いの競技関係者から勧められ、付け焼き刃で知識を詰め込み、足を運んだ。ほかに報道陣の姿はなく、当たり障りのない質問から始めた。

「本当の笑顔は東京で」

 「目標はやっぱり(福原)愛ちゃんかな?」と切り出すと、強く否定された。「何言ってんの。私と愛ちゃんは戦型が違うんだから」。率直な物言いと思わぬ答えに戸惑う記者を見かねて、隣にいたもうひとりが説明を始めた。「あのね、戦型というのがあって……」。前者が平野美宇(日本生命)、後者が伊藤美誠(スターツ)。当時小学5年生だったが、勝ち気な平野と面倒見のいい伊藤の性格は今も昔も変わらない。

 改めて目標の選手を聞くと、返ってきたのは「チャン・イーニン」。中国読みの名前ですぐには分からなかったが、後で調べたら04年アテネ五輪、08年北京五輪女子シングルスで2連覇した張怡寧と分かった。既に世界の頂点を見つめていた。

 伊藤は静岡県出身。卓球経験者だった母美乃りさん(45)の指導で、3歳になる前から卓球を始めた。深夜にまで及ぶ二人三脚の練習はいまや語り草だが、幼い頃から世界トップ選手の映像もよく見せた。美乃りさんは伊藤がおなかにいる頃から胎教がてら試合を実況中継したという。睡眠学習と称して眠る伊藤の耳元で「中国選手を倒すよ」とささやいたこともある。

 平野は山梨県出身。卓球教室を始めた母真理子さん(52)と「一緒にいたい」と3歳から教室に通うように。持ち前の負けず嫌いで強くなり、小学1年時に「将来は五輪で金メダル」と言い出したことで指導が熱を帯びた。小学生の頃は地元の高校の練習に参加したほか、週1回程度、中国代表経験のあるコーチの指導も受けた。

 2人にとって中国の存在は身近だった。小学6年になった2人は12年8月、東アジアホープスに再び出場し、中心選手として団体優勝を勝ち取った。12年ロンドン五輪の女子団体で日本が卓球界初のメダルとなる銀メダルを獲得した直後とあって、平野が「4年後の五輪に出場して、8年後に金メダル」と言えば、伊藤も「8年後はこのメンバーで五輪を戦い、優勝したい」と屈託なく話した。日本卓球界が掲げる「打倒中国」の目標を気負うことなく背負っていた。

 この時、視察に訪れたロンドン五輪代表監督の村上恭和(やすかず)氏(63)は中国に敗れたロンドン五輪の決勝を振り返り、「日本の選手は戦う前から(満足感もあって)笑顔だった。リオデジャネイロ五輪で悔し涙を流せるレベルになり、その次の五輪で本当の笑顔を見せられたら」と語っている。まだ東京オリンピックの開催も決まる前のことだ。

「なぜあきらめるのか」

 ただし、…

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