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全国に広がる第5波 楽観改め対策立て直しを

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 東京都などに発令されている新型コロナウイルスの緊急事態宣言が埼玉や大阪など4府県にも拡大される。いずれも8月末までだ。

 東京の1日当たりの新規感染者数は3日連続で3000人を超えた。感染「第5波」は大都市から地方に広がり、全国の新規感染者数も初めて1万人を突破した。

 専門家は「経験したことがない感染拡大」と警鐘を鳴らしている。政府はワクチン頼みの楽観姿勢を改め、対策を立て直すべきだ。

 背景には、感染力が強い変異株の広がりがある。40~50代を中心に重症者が増え、医療体制が逼迫(ひっぱく)しつつあるとの声が上がる。

 より強い対策が必要な局面だが、7月中旬に宣言が発令された東京でも繁華街の人出が十分に減っていない。

 専門家は「危機感を共有できていないことが最大の問題」と指摘している。

 こうした状況を生んだのは、政府の見通しの甘さだ。ワクチン接種を進めれば、感染が拡大しても医療崩壊は防げると高をくくっていたのではないか。

 高齢者への接種に大号令をかける一方で、変異株対策の検討を怠ってきた。宣言拡大に追い込まれると、承認されたばかりの治療薬の効果をアピールしている。

 これでは、感染者が増えても制御可能だという誤ったメッセージが、国民に伝わりかねない。

 政府はこれまでの対策の不手際を反省し、国民に正面から感染防止策への協力を求めるべきだ。

 専門家による政府の分科会では、宣言の全国拡大や大型商業施設への休業要請など対策強化を求める意見も出た。

 東京オリンピックを開催中であることを理由に、手をこまぬいていてはいけない。感染状況の悪化が続くようであれば、対策を強化する必要がある。

 医療崩壊の回避が最優先だ。先を見越して病床を確保し、自宅で療養する患者の症状悪化を把握する体制を整えなければならない。

 分科会の尾身茂会長は感染拡大への五輪の影響にも言及し、「すべきことは全て全力でやることが、政府や大会組織委員会の当然の責任だ」と述べた。菅義偉首相は率先して、その責任を果たさなければならない。

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