特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚・著者に聞く

ブレイディみかこさん 『他者の靴を履く』

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 (文藝春秋・1595円)

「エンパシー礼賛」への違和感

 中学生の「ぼく」を主人公にした2019年刊のノンフィクション『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の「副読本」だと位置付ける。

 『ぼくは……』で「エンパシー」(empathy)とはどういうものかと試験で問われた「ぼく」は、「誰かの靴を履いてみること」だと答える。日本語で「共感」と訳されることもある言葉だが、そうではなく、必ずしも同じ考えを持たない相手の立場を踏まえた上で、他者を理解する知的な能力がエンパシーである――。わずか4ページに登場したその言葉が、予想に反してインタビュー記事やSNS(ネット交流サービス)で幾度となく注目された。

 「エンパシーはすばらしいとする伝道者のように思われるのは、腑(ふ)に落ちなかった。有害な、危険な部分もあると伝えたかった」。本書でも学術書の引用を交え、「エンパシー」について全11章を費やして論じている。例えば、介護士や保育士などのケアワーカーらは、ケアをする対象が「自分に何をしてほしいか」の内心を推し量ろうと努める。その姿勢は「苦しい財政事情があるのだから」と政府を肯定し、「お上」からの「エン…

この記事は有料記事です。

残り318文字(全文825文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集