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(東京大学出版会・1870円)
熱湯風呂もユーミンも、日常言語の謎
川添愛の本はなぜ面白いのだろうか? 第一に、多くの人が(ここで「人は皆」などと過剰な一般化をしてはいけない)しちめんどうくさい学問として敬遠しがちな言語学だが、じつは身近の不思議を解き明かし、生きるのを少し楽しくしてくれる。第二に、実用的でない抽象的なものと思われがちな言語学の知識が、実践に応用できることを教えてくれる。第三に、著者は言語学者なのに(だからこそ?)、変な言葉や表現を見つけることを楽しんでいる。第四に、著者は言語学よりもプロレスのほうが好きではないかと思わせるほどで、プロレスを語る熱い文章が生き生きとして弾(はじ)けている。おまけに、本書を彩る、コジマコウヨウによる登場人物たちの似顔絵が秀逸。
本書は、言語学エッセイ集である。評者自身、千野栄一、鈴木孝夫、田中克彦といった名だたる言語学者の著作を愛読してきたが、これほど自由で楽しい文章を書く言語学者は初めてだ。川添氏は理論言語学を専攻し、その後人工知能(AI)研究にも携わったあと、現在は作家として活躍をしている。人工知能と言語をテーマにしたファンタジーを次々に書き、理論を物語の世界で華麗に展開してきたが、今回は初めてのエッセイ集で、著者…
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