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コロナと財政見通し 危機隠す見せかけの改善

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 甘い予測で財政が改善したと見せかけても絵空事に過ぎない。

 菅義偉政権が半年に1度の財政見通しを公表した。「基礎的財政収支」と呼ばれ、借金に頼るほど赤字が膨らむ指標だ。2025年度の黒字化を目標にしている。

 これまでは新型コロナウイルス禍に伴う大型経済対策を実施したことで赤字が急増し、黒字化は29年度にずれ込むとされてきた。

 ところが今回は、黒字化が2年も前倒しされて27年度になった。昨年度の税収が過去最高になり、今後も増加が見込めるためという。さらに歳出を抑えれば、25年度の目標達成も可能とされた。

 あまりに現実離れした想定だ。改善の根拠としている税収増は、年3%を超す高い経済成長が長期間続くことを前提にしている。

 これほどの好景気はバブル期以来実現していない。コロナの影響で人口減少が加速し、高成長は一層難しい時代になっている。

 税収が最高になったのも、米中の景気回復の恩恵で大企業中心に輸出産業の業績が持ち直したことが大きい。緊急事態宣言が繰り返され、国内経済は厳しいままだ。

 成長率が1%程度という実態に即した見通しも公表された。27年度は赤字が6兆円超にも上り、黒字化にはほど遠い状態だ。

 菅政権はこの見通しを使うつもりはない。だが楽観論に固執すると危機的な財政が覆い隠され、歳出抑制の機運もしぼんでしまう。

 安倍晋三前政権も高成長を前提に大盤振る舞いを続け、黒字化目標を大幅に先送りした。衆院選を控えた今も、与党から大型補正予算を促す声が強まっている。

 国民生活を支える支出は惜しんではならない。だが選挙目当ての放漫財政は許されない。

 来年から団塊の世代が75歳以上になり始め、社会保障費は一段と膨らむ。将来世代へのつけ回しをさらに増やすのは無責任過ぎる。

 菅政権は現実を踏まえ、財政立て直しの道筋を描き直すべきだ。

 大事なのは無駄の排除だ。昨年度予算の使い残しは30兆円にも上る。不要不急の事業が多く含まれていたからではないか。

 高収益を得ている大企業や富裕層への課税強化も検討する必要がある。コロナ禍で深刻化した格差の是正にもつながるはずだ。

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