静岡県熱海市の土石流災害から1カ月がたった。
22人が死亡し、5人が行方不明のままだ。建物の被害は130棟を超え、今も約300人が避難生活を強いられている。
これから本格的な台風の季節となる。被災者の生活再建と、2次災害の防止に万全を尽くさなければならない。
これまでの県の調査からは、「人災」の疑いも浮上している。
崩落した土砂の大半は盛り土だったとみられる。盛り土の総量は市への届け出の2倍に上り、高さは県条例が定める上限の3倍以上だったと推計されている。長雨で大量の水がたまり、崩落した可能性がある。
どういう経緯で盛り土ができ、放置されてきたのか。行政側がどうして条例違反を見過ごしたのか。徹底解明が求められる。
土砂の搬入は2009年春に始まり、翌年夏にはおおむね完了した。当時、盛り土に産業廃棄物が混入していたことが判明し、県と市が業者に対して撤去を指導したという。上限超過については把握していなかったのだろうか。
一方、こうした盛り土を規制する制度が不十分であることも指摘されている。
宅地造成の場合は、法律で安全対策が定められ、工事終了後には自治体の検査を受けることが義務付けられている。しかし、今回は建設残土の処分を目的とする盛り土だったため、この法律の対象外だった。
残土処分には主に各自治体の条例が適用されるが、規制の内容にはばらつきがある。
一定規模以上の盛り土を許可制としたうえ、懲役刑の罰則を設けている自治体もある。だが、静岡県の場合は届け出制で、罰則も20万円以下の罰金にとどまる。
各自治体が個別に対応している限り、規制の緩い地域に残土を運び込む業者は後を絶たないだろう。過去にも各地で崩落事故が起きている。残土処分のための盛り土を全国一律で規制する法律を早急に整備すべきだ。
国は、危険な盛り土が他にもないか全国で点検している。同じような大災害を繰り返さないための仕組みづくりを進めなければならない。