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デジタルを問う 欧州からの報告

欧州では人権や民主主義の視点でデジタルテクノロジーのあり方を問い直す動きがあります。現場から報告します。

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デジタルを問う 欧州からの報告

なぜ個人データ保護が必要なのか 「情報自己決定権」とは何か

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山本龍彦・慶応大法科大学院教授=本人提供
山本龍彦・慶応大法科大学院教授=本人提供

山本龍彦・慶応大法科大学院教授

 日本でもデジタル化社会に合わせたプライバシー保護の議論が進みつつある。ただ、山本龍彦・慶応大法科大学院教授は、日本では欧州などに比べ「何のために個人データを保護すべきか」という本質的な視点が足りないと指摘する。【聞き手・岩佐淳士(ブリュッセル支局)】

 プライバシー権は技術の発展によって姿形を変えてきた。もともとは19世紀末に私生活の秘密を暴露されない権利として提唱された。背景には印刷や写真技術の発展に伴うメディアの発達があった。こうした古典的なプライバシー権では、自分の情報が知らないところで別の情報と連結され、分析されていくことなどについては権利侵害とは見なされなかった。それが1960年代以降、情報通信技術が発達する中で、自分の情報をコントロールしていくことの重要性が強調されていく。

 欧州ではこうした「情報自己決定権」が、基本的人権として強く認識されている。これにはナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の歴史が影響している。ナチスは米IBMが開発した「パンチカード」を使ってユダヤ人を効率的に選別し、強制収容所に送っていた。欧州は第二次世界大戦中の痛烈な体験で、個人データを集約して人を選別することが、人間の尊厳を大きく傷つけるということを思い知った。ドイツでは83年の時点で、連邦憲法…

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