強権国家ベラルーシで働く女性記者 真実を報じ禁錮半年の処罰に

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出廷したボリセビッチさん(手前)と、死亡したボンダレンコさんの医療情報を明かしたとして起訴された医師(奥)=ミンスクで2021年2月19日、ベラルーシ国営ベルタ通信・AP
出廷したボリセビッチさん(手前)と、死亡したボンダレンコさんの医療情報を明かしたとして起訴された医師(奥)=ミンスクで2021年2月19日、ベラルーシ国営ベルタ通信・AP

 強権体制が強まる旧ソ連のベラルーシで今、最も危険な職業は記者と言われる。政権に批判的な報道機関の記者が拘束される事例は後を絶たない。1人の男性が死亡した件で当局の説明の虚偽を暴いた女性記者を待ち受けていたのも、実刑判決だった。

 ベラルーシ最大のニュースサイト「トゥット・バイ」で刑事事件を担当する記者をしていたエカチェリーナ・ボリセビッチさん(37)は2020年11月19日、買い物の途中で黒ずくめの男たちに同行を求められた。自宅の捜索後に連行されたのは、かつて報道公開された際に見学したことのある拘置所。カビや汗の臭いが染みこむ居室を見て「早く家に帰って体を洗いたい」と思った場所だった。

 ボリセビッチさんの運命を変える事件が起こったのはその8日前である11日の夜だった。首都ミンスクの住宅街にある広場で、住民たちが柵に飾った反政権を象徴する白と赤のリボンを覆面の男らが取り除こうとしていた。それを目撃した住民たちで作るインターネットのチャットに、近くに住むロマン・ボンダレンコさん(当時31歳)が「僕が行く」と書き残し、そのまま行方不明になった。

 ボンダレンコさんはその後、警察署から意識不明で病院に搬送されたところを知人に発見された。頭を強打しており、翌12日に死亡。治安当局はボンダレンコさんが「酔っ払ってけんかをし、広場に倒れていた」と説明した。だが、目撃証言などから、覆面の男らが暴行を加え、連れ去った可能性が浮上。住民たちは当局がボンダレンコさんの死に関与したと疑った。

医療情報から当局のうそを暴く

 この疑いを確信に変えたのがボリセビッチさんの書いた記事だった。医師の証言や診断書を基にボンダレンコさんの血液からアルコールが検出されなかったことを突き止め、当局の説明を覆した。しかし、待っていたのは「医療秘密を漏えいした」という容疑での逮捕。取材に応じた医師と共に起訴され、禁錮半年の判決を受けた。

 ボンダレンコさんの母エレーナさん(56)は毎日新聞の取材に「私たちはエカチェリーナ(ボリセビッチさん)が情報を記事にすることに同意していた。何の秘密もなかった」と振り返る。今年5月に出所したボリセビッチさんも「記者としての仕事をしただけだ。だが、今や記者の仕事は犯罪と同義になってしまった」とため息をつく。

 ルカシェンコ大統領は1994年の就任後、報道機関への統制を強めたが、近年はインターネットの普及に伴い独立系のニュースサイトが急増。20年8月の大統領選後に起こった抗議行動では、これらのメディアを通して治安部隊が市民に振るった暴力の様子が広まり、国民の怒りを引き起こした。

政権は独立メディアへの弾圧強め

 だが、抗議行動を弾圧によって沈静化させた今、ルカシェンコ氏は「民主主義ではなく、テロリズムを植え付けている」として、独立系メディアや非政府組織(NGO)などへの攻撃を強めている。

 ボリセビッチさんが所属していたトゥット・バイは5月に脱税容疑で捜索を受け、サイトは閉鎖された。他の独立系メディア…

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