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ウィシュマさん死亡 命を軽んじる入管の非道

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 名古屋市の入管施設に収容されていたスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題で、出入国在留管理庁が調査報告書を公表した。

 「留学」の在留資格で来日したが、その後に非正規滞在となり、入管施設に収容され、国外退去処分を受けた。収容から半年あまりの今年3月、33歳で病死した。

 報告書で明らかになったのは、体調が日々悪化していく様子を職員が認識しながら、必要な措置を取らなかったことだ。命を軽視していたといわざるを得ない。

 死亡する半月ほど前には尿検査の数値が著しく悪くなり、体を思うように動かせなくなっていた。だが、専門医による診療は行われなかった。

 一時的に収容を解かれる仮放免を求めていたが、職員の多くは、許可を得るために体調不良を誇張していると疑っていた。物を飲み込めない状態に、からかうような言葉を投げかける職員もいた。

 ウィシュマさんは収容時に、同居していた男性から暴力を振るわれていたと訴えた。脅す内容の手紙も施設に届いたが、施設側は事実確認の調査をしなかった。

 非人道的な対応が続いていたにもかかわらず、報告書からは、事態を重く受け止めようとする姿勢が見えない。

 問題は、この施設の体制にあったと結論づけ、情報共有や人員確保の不十分さ、職員の教育不足を挙げた。適切な治療を受けられなかったのは、常勤医がいない医療上の制約が原因と指摘した。

 送還が困難になるなどとして仮放免を許可しなかったことも、不当とはいえないと判断した。

 2007年以降、入管施設での死者はウィシュマさんを含め17人に上る。調査を徹底した上で再発防止策を講じなければ、理不尽な悲劇が繰り返されかねない。

 問題の背景には、在留資格のない「不法残留者」を認めない入管行政のかたくなな姿勢がある。日本社会から排除しようとする考え方が、収容者への対応に表れているのではないか。

 自由に生きる権利を奪う収容は本来、極めて限定的に運用されるべきだ。入管の判断だけで、期限もなく実施できる現状は、速やかに改めなければならない。

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