地球温暖化は人間の活動が原因であることは疑いなく、その影響は既に世界のあらゆる地域で出ている。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新報告書は、こう結論づけた。
IPCCの参加各国を代表する科学者が、1万4000本を超える論文を分析した。報告書が突きつけたのは厳しい現実だ。
昨年始動した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、今世紀末に産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えることを目指す。しかし、報告書によると、すでに1・1度近く上昇しており、今後20年以内に1・5度を上回ってしまうという。
世界中で観測されている異常な熱波や大雨、干ばつが、温暖化の影響である可能性も高まった。日本を含む東アジアも影響が顕著だ。猛暑や大雨は今後も増える見込みだ。
今年も中国やドイツで大洪水が起き、北米などは熱波に襲われた。日本も毎年のように豪雨災害に見舞われている。気候危機は人々の命や暮らしを脅かす。
最悪の事態を回避できる道筋も示された。世界全体で2050年ごろまでに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすれば、今世紀末には1・5度の目標を達成できる可能性があるという。対策の加速と強化を迫るものだ。
IPCCの報告書は、国際交渉や政策決定の根拠となってきた。今秋には、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が英国で開かれる。
日本は、温室効果ガスの排出について、30年度に13年度比で46%減、50年に実質ゼロを目指す。欧米はより野心的な目標を掲げる。
目標を達成するためには、世界最大の排出国である中国や、脱炭素化が遅れる新興国の取り組みも欠かせない。
国連のグテレス事務総長は、今回の報告書について「人類への警報だ」と述べた。COP26に参加する各国が、高い削減目標の設定で足並みをそろえられるかどうかが問われている。
温暖化対策をめぐる過去の交渉では、先進国と新興国の対立が繰り返されてきた。各国は、この報告書を国際協力を深める契機としなければならない。