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内田麻理香・評 『往復書簡 限界から始まる』=上野千鶴子・鈴木涼美・著

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『往復書簡 限界から始まる』
『往復書簡 限界から始まる』

 (幻冬舎・1760円)

暗部をも白日のもとにさらす言葉の応酬

 鈴木涼美の文章はデビュー時から好きで追っていたが、「私のAVデビュー作のギャラ一〇〇万円は、何に対して支払われたのか」(文春オンライン、二〇一七年)は特に印象的だった。「火傷(やけど)だらけ傷だらけの人生は延々と続く」と書かれたその寄稿は、ふだんの人を食ったようなところもなく、辛辣(しんらつ)さが容赦なく自分に向けられており、この文全体もまた「傷だらけ」であった。こんな素晴らしい鈴木の文をもっと読みたいと望んでいたところ出版されたのが、この上野千鶴子との往復書簡である。

 二人の年齢は母娘くらいの差があり、社会学を専攻していた鈴木にとってみれば、上野は大先輩にあたる。この二人が、往復書簡という古めかしい形式で、母と娘、恋愛とセックス、結婚、仕事などのお題で語り合う。しかし、この内容は、「語り合う」という言葉から想像できるような生ぬるいものではない。第一信では、被害者として語るための材料を多く持っているはずの鈴木であるが、彼女は被害者の名を引き受けることへの躊躇(ち…

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