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女性用トイレが消える? 厚労省の議論が招いた混乱と不安

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トイレを男性用と女性用に区別する原則は「今後も必要」と述べる厚生労働省有識者検討会の報告書=東京都内で2021年8月2日、塩田彩撮影
トイレを男性用と女性用に区別する原則は「今後も必要」と述べる厚生労働省有識者検討会の報告書=東京都内で2021年8月2日、塩田彩撮影

 小規模事業所のトイレを巡り、7月下旬からツイッターで「女性用をなくすな」と訴える投稿が増えた。厚生労働省による設置ルール変更の行方を危ぶむ声だ。その議論の様子を探ると、確かに混乱や不安につながるポイントが山積していた。女性の働きにくさや性的少数者への差別につながるような改定はすべきでないが、雲行きはどうも怪しくなってきた。【塩田彩/デジタル報道センター】

時代に合わなくなったルール

 厚労省が見直し作業を進めているのは、労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則」で、事務所内の衛生環境や照明などに関するルールを定めたものだ。この中では、トイレについて「男性用と女性用に区別する」と明記。壁で仕切られた便器の数は、同時に仕事をする労働者の人数ごとに決めている。違反した場合は6カ月以下の懲役か、50万円以下の罰金が科される。

 ただ、この内容は1972年の制定時から変わっていない。50年の間に生じた社会の変化にマッチしておらず、車椅子やオストメイト(人工肛門利用者)に対応したバリアフリーのトイレや、性別を区別しないトイレがカウントされない事態になっていた。

 規則を見直す動きは、働き方改革関連法に絡んで2018年にようやく始まった。厚労省の有識者検討会が報告書をまとめたのは21年3月。現行の内容を原則として残しつつ、「同時に就業する労働者が常時10人以内」の場合は、男女兼用の「独立個室型」トイレを一つ置けば済むことを特例として認める考えを示した。独立個室型は強固な扉や壁で隙間(すきま)がないように囲われ、施錠も可能なトイレを指すため、使用時の安全性が比較的高いと考えられたのだ。

 この方針に基づいた省令改正案は、7月28日に厚労省労働政策審議会分科会に諮られた。このまま了承されれば、9月上旬に施行される見通しだ。

ツイッターで始まった「反対運動」

 そんな中、7月25日ごろから、厚労省にとって思いがけない声がツイッター上で広がり出した。見直し議論が進んでいることを知った人たちによって、「#厚労省は職場の女性用トイレをなくすな」というハッシュタグをつけた投稿が飛び交うようになったのだ。「前の会社は共用のトイレしかなかったけど生理のときすごく気を使った」「まさか女性専用のトイレという普通の人権まで脅かされるとは思わなかった」と、不安や怒りをあらわにする声が多かった。

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