連載

新・コンサートを読む

梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

連載一覧

新・コンサートを読む

新国立劇場≪カルメン≫ 分裂する声=梅津時比古

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
撮影:寺司正彦(新国立劇場提供)
撮影:寺司正彦(新国立劇場提供)

 人の表面の行動と、内面の声が違っていることは、よくあることだ。接していても、それはなかなか分かりにくい。分からぬままにだまされることも多い。意図的にだますだけではなく、どうしても内面の声にそむく行動に出てしまうこともあるだろう。特に恋愛に煩悶(はんもん)しているときにはそうなりがちだ。

 新国立劇場が新制作したビゼーのオペラ≪カルメン≫におけるアレックス・オリエの演出は、カルメンを現代のロックスターに読み直す意匠(7月3日、新国立劇場で所見)。カルメンが当時の社会で、自由を求めて真剣に生きようとするが故に“はずれ者”にならざるを得ない原作の概念に鑑みれば、この読み直しは全く違和感が無い。

 ロッカーの衣装でステージに立つカルメン役のステファニー・ドゥストラックが映像でドラムスなどをバックに映され、映像とダブりながら、実際の舞台でも歌うという複雑な二重構造になる。すると、≪カルメン≫の中でも有名な≪ハバネラ≫などのアリアをオーケストラ伴奏で歌っているにもかかわらず、その油を含んだような甘さを持つ声が、耳の中ではジャニス・ジョプリン、ビリー・ホリデー、エイミー・ワインハウスなどの女性ロ…

この記事は有料記事です。

残り764文字(全文1261文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集