「底辺は切り捨てられる」都の日雇い仕事、8月休止の“事情”
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東京都内の生活困窮者の仕事が「暑さ」を理由に失われている。都が今年初めて、都有地の清掃などの日雇い仕事を8月の1カ月間、休止したからだ。名目は「熱中症対策」だが、取材を進めると別の“事情”も見えてきた。「底辺の人間は切り捨てられる」。ホームレスたちに渦巻くのは不信感ばかりだ。【木許はるみ/デジタル報道センター】
野宿生活30年「8月の収入ゼロ」
7月中旬、記者は都内で生活困窮者の支援をする団体の巡回に参加した。ホームレスたちに生活の変化を聞いて回っていると、男性(73)が「8月は仕事がまったくなくて」とこぼした。男性は公園の脇に段ボールを敷いて、仲間と身を寄せ合っていた。
男性は約30年間、野宿をしている。きっかけは、家族を立て続けに亡くしたことで心労を抱え、技術職の定職を離れたことだった。「立ち直ろうと思ったときには遅かった」。路上生活を始め、仕事がある時は建設現場に住み込みで働いた。
男性のいまの唯一の稼ぎが、都が日雇い仕事を手配する「特別就労対策事業」だ。毎月3~4回働き、月額2万~3万円を得る。稼ぎは食費のほか、荷物を預けるコインロッカー代、悪天候の日をしのぐネットカフェの料金に充てる。求職者は事業に登録した番号順に仕事をもらうが、当日に順番が前後することもあり流動的だ。男性は職業安定所にこまめに足を運び、自分の順番をチェックしている。
男性は春ごろ、8月の事業休止を知った。この間の収入はゼロになる。「食費を節約して、炊き出しに行く回数を増やすか、なんとかして暮らしていかないといけないですね」と話す。「昔は住所がなくても仕事に受け入れてくれるところがあったんですよ。今はどこも住所が必要。他の仕事で収入を穴埋めしようとしても厳しいですね」
「熱中症対策」きっかけは死亡事案
都就業推進課によると、特別就労対策事業は1972年、日雇い労働者の多い東京・山谷地区の就業対策として始まった。当時、戦後や関東大震災の復興事業が落ち着き、他の仕事が減った場合の「補完」という位置づけだった。
仕事内容は、公園や港湾埋め立て地、都道といった都有地の清掃や除草がメインだ。都が民間に仕事を発注し、民間が労働者を雇う。労働時間は5時間半、日当は約8000円だ。利用するのは、職業安定所で求職登録し、日雇い仕事の手帳を受けた人。2020年度の利用者は1529人で、9割が60代以上。前出の男性(73)のように高齢でほかの仕事ができず、事業を唯一の収入源とする人もいる。
ところが19年5月、作業中の50代男性が倒れ、搬送先で亡くなる事案が起きた。…
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