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働くのは何のため?人類学者が考える「過剰に働く」現代社会

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文化人類学者で岡山大准教授の松村圭一郎さん=清水有香撮影
文化人類学者で岡山大准教授の松村圭一郎さん=清水有香撮影

 人は何のために働くのか。お金を稼ぐとはどういうことか。そんな問いを<当たり前の外>から見つめ直す「働くことの人類学【活字版】 仕事と自由をめぐる8つの対話」(黒鳥社)が刊行された。文化人類学者で岡山大准教授の松村圭一郎さんがホスト役を務め、世界各地をフィールド調査する研究者6人と対話。狩猟採集民や牧畜民、貿易商らの仕事論や人生観を通して、働くことの意味を解きほぐす。

「常識」覆す世界各地のエピソード

 【活字版】とあるように、本書は2020年7月~21年2月に「コクヨ野外学習センター」(https://anchor.fm/kcfr)のポッドキャストで配信された番組を書籍化したもの。オフィス家具・文具大手のコクヨとタッグを組み、番組制作から関わった黒鳥社の若林恵さんは、「働く」というテーマについて、「今は働くことが生きることと結びつかず、その意味が大きく揺らいでいる。働くということをもう一度、社会や人生の中に埋め込み直さないといけないんじゃないかという思いがあった」と説明する。一冊の本にまとめるにあたり、番組のリスナーだった作家の柴崎友香さんと松村さんの巻頭対談や関連オンラインイベントの採録も加えた。

 それぞれの対話には、凝り固まった日本社会の「常識」を覆すエピソードがいくつも盛り込まれる。パプアニューギニアがフィールドの深田淳太郎さんは、現金だけでなく貝殻の貨幣「タブ」も使うトーライ人の社会を紹介。タブは税金や授業料の支払いなどに使われる法定通貨の一つである一方、葬式で参列者にばらまかれるなどコミュニティーにおける信頼や名誉といった社会的な価値があり、<お金の外側にもっと豊かな意味>があると述べる。…

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