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「9.11」後の20年 米同時多発テロ20年

米同時多発テロから20年。特集記事や写真・動画で振り返ります。

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9・11後の20年

復権タリバンに対応が割れる周辺国 歓迎姿勢や警戒が混在

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イランのライシ大統領。タリバンにアフガニスタンでの安定を呼びかけている=AP
イランのライシ大統領。タリバンにアフガニスタンでの安定を呼びかけている=AP

 イスラム主義組織のタリバンが復権したアフガニスタンの情勢は、周辺地域を揺るがしている。米国の影響力がそがれたことを歓迎する声が出る一方で、アフガン難民の流入を警戒する動きが相次ぐ。隣り合わせる国々は、異なる思惑を抱えながら対応に追われている。

かつて対立したイランも関係改善

 米軍の撤収に伴うタリバンの実権掌握を前向きに捉えているのは、西隣にある地域大国のイランだ。アフガンでガニ政権が崩壊した直後の16日、ライシ大統領は「イランは隣国かつ兄弟国としてアフガン安定の努力を支援し、アフガンの全勢力に(新政権樹立の)合意達成を呼びかける」と表明。8月に就任したライシ師は反米保守強硬派の立場から「米国の軍事的敗北とその撤退はアフガンに永続的な平和を打ち立てる機会になる」とも論評した。

 イランとタリバンは複雑な関係を歩んできた。イスラム教スンニ派の復古主義的な教えを信奉するタリバンは元々、シーア派を国教とするイランを敵視した。前回にアフガンで実権を握っていた1998年には、戦闘員がイラン人の外交官ら9人を殺害する事件が発生。シーア派を信奉する親イランの少数民族ハザラ人を弾圧したこともあり、イランとの対立が一時激化した。

 その後に両者は関係を改善し、2001年のアフガン戦争開始後は「米軍と戦うタリバンをイランが秘密裏に支援している」との見方も米政府内で浮上。ここ数年、イランは公式にタリバン指導部との会合を開くようになり、今年7月には首都テヘランで当時のガニ政権とタリバンが協議する場も提供した。

 一方、イランはタリバンの実権掌握を受け、既に300万人規模に達する国内のアフガン難民が増える事態を恐れている。米国による制裁で経済難が続く中、更なる難民の流入は避けたいのが本音だ。アフガンの政変後は国境警備を強化し、国境地帯に一時待避所を設けている。

 テヘラン大学国際関係学部のフォアド・イザディ准教授は今回の事態を前に、「イラン側はタリバンが過去の失敗から教訓を得ていると期待している。彼らが市民に有害な行動を取らなければ問題はない。イランにとっての利益はアフガンの平和にある」と指摘していた。

過激派の流入恐れる中央アジア

 タリバン復権に伴う混乱への警戒は、アフガン北部に接する中央アジア諸国でも高まっている。

 インタファクス通信によると、ウズベキスタンは14、15両日、領空に侵入したアフガンの軍用機と軍用ヘリ計46機を南部テルメズの空港に強制着陸させた。この際にウズベク国防省はアフガン機1機を撃墜したと発表したが、接近…

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