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女性は男性の同伴なしに外出さえ許されず、自尊心を捨てて、4歳の男児に同行をお願いするしかなかった――。アフガニスタンで再び実権を握ったイスラム主義組織タリバンは、かつてイスラム教の厳格な解釈に基づき「恐怖政治」を敷いた。今回は女性の権利を尊重するそぶりを見せるが、アフガンで判事を務めた女性は「全く信頼できない」と疑念を隠さない。暗黒の時代が戻るのだろうか。
タリバンがアフガンの国土の大半を支配していた1996~2001年の5年間。判事だったナジュラ・アユービさん(53)は首都カブールで、自宅に閉じこもる日々を強いられた。そのタリバンが20年ぶりに復権した。「あの時代が戻ってくるのかと思うと、恐怖しかない」
8月半ばにカブールを制圧した後のタリバンは、対外的には女性への対応を軟化させる姿勢も示しているが、ナジュラさんは「女性は家にいればよいというのが彼らの発想だ。とても信頼できない」と不信感を募らせる。
「タリバン」と聞いて思い出すのは、同じ集合住宅に住んでいた4歳の男児の顔だ。同居家族に男性がいなかったため、パンを買いに出るのにも、男児の母親にチップを渡して「ついてきてほしい」と頼んだ。機嫌を損ねないように男児にも小遣いを渡す。「人権の何たるかを知る法律家として屈辱だった。そんな環境で育った子供たちが、女性を当然のように蔑視することも悲しかった」
女性判事に立ちはだかった壁の数々
タリバンが前回権力を握る前から、ナジュラさんの人生は、保守的なアフガン社会の「壁」との闘いが続いた。故郷の東部パルワン州では、女性は10代前半で結婚相手を親族に決められ、結婚後は家事に追われるのが当たり前だった。女児を産んだ母親は「男の子を産めない役立たず」と親族にののしられた。
「法律の力で女性を助けたい」と思ったナジュラさんを後押ししたのは、高校教師の父アユービ・シャーさんだった。慣習にとらわれず、「自由」を愛する父は「男女は平等なんだ」と娘に教えた。79年から当時のアフガン政権の後ろ盾となっていたソ連への留学を経て、パルワン州で初めての女性判事になった。
しかし、現実は厳しかった。地元の法的慣習では、女性の財産相続の割合は男性の半分、女性の目撃証言は「男性の半人分」としか評価されず、ナジュラさんも慣習に沿った判決を出さざるを得なかった。
92年には父が自宅前で射殺された。…
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