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「迫る」は人物の内面を探ったり、出来事の背景を掘り下げたりする大型読み物です。

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元特攻隊員の裏千家前家元(その1) 争いない世、茶の精神で

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西宮神社での献茶式で、柄杓に手を伸ばす裏千家の前家元、千玄室さん=兵庫県西宮市で2021年4月19日、山崎一輝撮影
西宮神社での献茶式で、柄杓に手を伸ばす裏千家の前家元、千玄室さん=兵庫県西宮市で2021年4月19日、山崎一輝撮影

 98歳になった今も聞こえる。しかも言葉一つずつが鮮明に――。

 「お前に任せたぞ、と死んだ仲間の声が聞こえるのです」

 死んだ仲間。それは太平洋戦争で航空機などに乗ったまま自らの命もろとも敵艦に体当たりすることを目的に出撃した特別攻撃隊員のことを指す。茶道裏千家(京都市)の前家元、千玄室さん。日本文化を代表する「巨星」であり、そして特攻隊で生き残った一人だ。死と背中合わせだった海軍での経験から、茶の精神を通して争いのない世界の実現に心血を注ぎ続けている。

 桜の季節は終わったが肌寒かった今年4月19日。誕生日を迎えた千さんの姿は、西宮神社(兵庫県西宮市)にあった。福の神を祭る神社の総本社。毎年この日に献茶式を行うのが長年の習わしだ。身長約175センチ。紺のスーツ姿と整えた白髪が相まって、茶人と思えない印象を受ける。背筋を真っすぐに、一歩一歩の確かな足取りは年齢を感じさせない。

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