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問う’21夏 コロナ禍と女性 困難強いる社会変える時

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 新型コロナウイルス禍は女性に、より深刻な影響を及ぼしている。流行は収まらず、苦境が続いている。

 働く女性の半数以上が、雇用の調整弁とされやすい非正規労働者だ。打撃を受けた飲食業や宿泊業に従事していた人も多い。職を失うケースが相次いでいる。

 特に、シングルマザーの状況は厳しい。昨年夏から秋にかけて、失業率が跳ね上がった。勤務時間を減らされた人もおり、収入の減少が暮らしを直撃している。

 NPO法人キッズドアは、給食のない夏休みに合わせ、全国の困窮する家庭に食料を送っている。「食事の回数を減らした」「肉や魚が食べられない」といった悲痛な声が寄せられているという。

 長期にわたるストレスから、倦怠(けんたい)感や不眠を訴える親も目立つ。子どもの進学への不安も抱えている。孤立させないように社会で支えなければならない。

男性優位のひずみ露呈

 キッズドアはシングルマザーの就労支援にも取り組む。就職に必要なスキルや資格取得などについて、オンラインセミナーを週末に無料で開催している。

 渡辺由美子理事長は「非正規で給料が安く、立場も不安定という状況を変えていくため、手厚い公的支援が必要だ」と話す。

 国や自治体は、職業訓練を充実させ、その間の生活も保障する仕組みづくりを急ぐべきだ。

 コロナ禍は、男性優位の社会のひずみを浮き彫りにした。

 日本は世界的に見ても、女性が家事や育児に費やす時間が男性より長い。

 昨春以降、外出自粛によるテレワークの普及で、男性が家事や育児に関わる時間は増えた。だが、一時的なものにとどまり、女性任せの状態に戻りつつある。

 一斉休校の際には、小学生以下の子どもがいる家庭で妻が仕事を辞める例が目立った。学校再開後も仕事に戻る動きは鈍い。

 男性は外で働き、女性が家のことを担う――。根深い性別役割意識が、さらに強まっているようにも見える。

 一方で、配偶者からの暴力(DV)の被害相談が増加している。2020年度は、前年度の1・6倍になった。家族が家で過ごす時間が増え、生活不安やストレスから、夫が妻に暴力を振るうケースが多い。

 女性の自殺者数が、今年6月まで13カ月連続で前年を上回っていることも深刻だ。精神的に追い詰められている状況がうかがえる。

 内閣府の有識者研究会は4月、コロナ対策の中心に女性を据えることが重要と強調し、幅広い分野でジェンダーの視点を入れた政策を進めるよう求めた。

 座長を務めた白波瀬佐和子・東京大教授は「コロナ禍で社会的に弱い立場の人、逃げ場のない人に、優先して対応する政策判断が急がれる」と指摘する。

声を反映できる環境に

 直面している困難について、女性たちの声が、行政を動かした例がある。大学生らがつくった団体「#みんなの生理」の活動だ。

 生理用品に消費税の軽減税率適用を求める署名活動から始めた。生理にまつわる問題に関し、タブー視せずに対応していく社会を目指している。

 大学生や高校生らを対象に実施した調査では、金銭的な理由で生理用品を買うのに苦労した人が2割、交換する頻度を減らした人が4割近くに上った。

 この調査結果は国会で取り上げられた。政府は、今年の男女共同参画の重点方針に「生理の貧困」への支援を掲げた。

 自治体による生理用品の無料配布も広がり、東京都立学校では9月から女性トイレに置くことが決まった。

 福井みのり共同代表は「コロナ禍での収入減とともに、この問題も注目されたが、一過性で終わったら根本的な解決にはならない」と懸念する。

 不利益が女性に偏っている現状と決別するには、世界から大きく遅れている男女格差の是正を速やかに進めなければならない。

 国や自治体、企業などで、意思決定に関わる女性を増やすことが不可欠だ。当事者の声をしっかりと反映させられる構造に変える必要がある。

 秋には衆院選がある。女性政策も大きな焦点になる。候補者を擁立する政党の姿勢、そして有権者の選択が問われる。

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