湯川秀樹博士の教科書復刊 量子力学の広がり予見 大阪大学出版会
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日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹博士(1907~81年)がノーベル賞受賞の2年前の47年に著した教科書「量子力学序説」が7月、大阪大学出版会から復刊された。旧仮名遣いなどを改めて読みやすくしたほか、湯川博士が当時、教科書に書き込んだ加筆部分も収録。現在につながる量子力学の広がりを予見していた記載もある。71年の新装版を最後に絶版となり、現役の研究者でも目にする機会は少なかったといい、復刊の中心となった大阪大の土岐博名誉教授は「私自身、存在を知らなかったが、教科書として今でも通用する内容だ」と話している。
湯川博士は京都帝国大(現在の京都大)専任講師となった翌年の33年、大阪帝国大(現在の大阪大)講師を兼任。34年に専任講師となり、京都帝国大教授に招かれる39年まで大阪帝国大で素粒子の研究に打ち込んだ。この間に発表した論文「素粒子の相互作用についてⅠ」(中間子論)で、38年に理学博士号を取得。さらにはノーベル物理学賞を受賞した。
量子力学は、物質を形作る原子やその原子を構成する電子や中性子など、微小な世界の物理法則を扱う学問。ニュートン力学や電磁気学などの古典力学が身近な物質の運動を対象とするのに対し、量子力学は物質を波と粒子の性質を併せ持つ存在として研究する。量子力学は20世紀の物理学、化学で中心的役割を果たし、さらには工学・生物学分野などでの応用が期待されている。湯川博士の教科書執筆はその黎明(れいめい)期にあたる。
原著にできるだけ忠実に
「昭和十九年十月」と記載のある「序」には「量子力学は今日、物理学のみならず化学においても、もっとも基礎的な地…
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