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社会部、ワシントン・エルサレム特派員などを歴任した大治朋子専門記者によるコラム。

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強者が弱者に負けるとき=大治朋子

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 米ハーバード大学の研究者が2001年に発表した論文「弱者はいかに戦争に勝つのか 非対称紛争の理論」は世界を驚かせた。

 ベトナム戦争など国力に格差がある1800年以降の国家間紛争200件を調べた。予想通り「強者」が「弱者」に勝つ確率の方が高かったが、3回に1回は「弱者」が勝っていた。住民を味方につけ、その心をつかみ、長期戦で心理的、経済的に強者を疲弊させると勝率が高まったという。

 国家間ではないが米国とイスラム主義組織タリバンによる非対称戦、アフガニスタン戦争はどうか。

 米軍はこの理論を踏まえたかのように周到だった。「弱者」タリバンに勝機を与えぬようドローンなどを駆使し、米軍の心理的、経済的な負荷を軽減した。

 問題は人心の掌握だった。

 09年春、駐アフガン米軍に従軍した私は、司令官が一冊の本を熟読しているのに気づいた。「ア・ベター・ウォー(より良き戦争)」(1999年刊)。ベトナム戦争教訓の書として当時、改めて注目されていた。…

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