コロナで見えた途上国の苦境 ブータンの妊婦医療事情から考える

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夫(左)とともにオンライン取材に応じるカルマさん。周囲は見渡す限り山に囲まれている=隅俊之撮影
夫(左)とともにオンライン取材に応じるカルマさん。周囲は見渡す限り山に囲まれている=隅俊之撮影

 青とピンクの二つのセンサー。日本発の遠隔妊婦健診に使う装置だ。今春、ほとんどが山に囲まれたブータンに導入され、高く評価されている。そこから見えてくるのは、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)の陰で忘れられがちな、開発途上国が抱える社会や経済のもろさだ。ブータンでの妊婦を巡る医療事情から考える。

 「生まれる頃はブータンは雨期。出産できる病院は村の近くにないので(ぬかるむ山道を越えねばならず)心配だ」。東部タシガン県のツァーンポ村。妊娠28週目のカルマさん(20)は不安げだった。オンライン取材に応じたカルマさんに携帯電話のカメラを周囲に向けてもらうと、見渡す限り山に囲まれている。

感染恐れ健診避ける人も

 ブータンは昨夏以降、全土でのロックダウン(都市封鎖)を2度経験。妊婦は8回の妊婦健診を求められるが、感染を恐れて混み合う病院に行くのをためらう人もいた。カルマさんの自宅から産婦人科医がいる県都タシガンの病院までは険しい山道を歩き、さらに車で計4時間かかる。感染リスクもあり「外出規制が多くて病院に行けなくなった」と話す。

 先進国と比べれば医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なブータンには、産婦人科医が15人しかいない。しかも半数は首都ティンプー勤務だ。2017年の妊産婦死亡率は出生10万人当たり89人、新生児死亡率は出生1000人当たり21人。病院が遠いために異変の察知が遅れることが少なくなく、「新生児の死因の多くは早産や妊娠合併症」(ティンプーの産婦人科医)という。

導入された日本発の遠隔健診技術

 そんなブータンに今春、日本のベンチャー企業「メロディ・インターナショナル」(香川県)が開発した「分娩(ぶんべん)監視装置iCTG」が導入され…

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