展覧会 白川昌生展 ここが地獄か、極楽か。 居心地の悪さ突き付け=評・高橋咲子

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インスタレーションを設置する白川
インスタレーションを設置する白川

 歴史の記憶装置に着目する美術家、白川昌生(よしお)(73)が1990年代以降に制作した、戦争をテーマにした作品を集めた。できごとが遠くなった今、目に留まるのは、あえて生々しい手触りを残した作品だ。

 終戦記念日の15日、展示室でインスタレーション「群馬県朝鮮人強制連行追悼碑」(2015年)を組み上げるパフォーマンスが行われた。継続設置を巡って、県と市民団体が係争中の追悼碑をモチーフにした作品。作品が映し出す現代社会の姿が、今回ひときわ明瞭になるのは、周囲にある新作「戦意発揚スローガン」(20年)のせいだろう。

 「欲しがりません 勝つまでは」「鬼畜米英」「大本営発表」。当時用いられた言葉を約5メートルの布に書いた。印刷された小さな活字とは異なり、手の跡が残る書き文字。見る人は巨大な文字を突き付けられ、猛烈に居心地が悪くなる。一方で、当時の人たちが受け取っただろう高揚感にも思い至る。白川は「こういうイメージをみんなが共有し、一つになっていった」と言い、今は忘れられたかつての空気を差し出す。

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