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ヤングケアラー

通学や仕事をしながら家族の介護をする子ども「ヤングケアラー」。将来が左右される深刻なケースも。

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ヤングケアラー当事者の声を形に プロジェクト開始 政策提言目指す

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「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」への参加を呼びかけるチラシ(プロジェクト事務局提供) 拡大
「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」への参加を呼びかけるチラシ(プロジェクト事務局提供)

 家族の介護や世話を担う子ども「ヤングケアラー」の当事者が支援を考え、発信する「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト」がスタートする。必要だと思う支援や、あったら良いと思う活動などのアイデアを形にすることを目指す。「ケアラーが楽しめること、おもしろいことをしたい」「ちょっとしたことでも気軽に話せる場所がほしい」――。発起人たちは、こうしたアイデアを出し合っており、10代や20代で家族をケアしている人、かつてケアしていた人たちに参加を呼びかけている。【山田奈緒/デジタル報道センター】

 ヤングケアラー支援を巡っては、社会の関心が高まり、政府や自治体が支援に向けて動き始めた。家族ケアの体験は人それぞれだが、今回のプロジェクトは社会に伝えたいことや支援のニーズを整理し、発信していくつもりだという。7月下旬に大学生ら発起人が集まったミーティングでは「政治家と対話し、声を届けたい」「一人親家庭の実態を伝えたい」といった意見も出た。

プロジェクトの発起人の一人、清崎鈴乃さん(右)は重い知的障害のある三つ下の弟(左)と暮らしている(清崎さん提供) 拡大
プロジェクトの発起人の一人、清崎鈴乃さん(右)は重い知的障害のある三つ下の弟(左)と暮らしている(清崎さん提供)

 発起人の一人、大学4年の清崎鈴乃さん=大阪市=は、重い知的障害のある三つ下の弟がいる。昨年から今年にかけ、実名で複数のメディアの取材に応じた。メディアがヤングケアラーについてどう伝えるのかを注視すると、「友達と遊べなくてつらい」「家事に追われて大変」などと単純化されている印象を受け、固定的なイメージが先行してしまうのではと心配になった。「つらくて大変なことだけが私の人生ではないし、ニュースのように分かりやすく伝えられないこともある」。報道されることが啓発の一歩になると感じる一方、当事者が自分の言葉で伝えていく必要性を感じるようになったという。

 清崎さんは弟と同じ小学校に通っていたため、自分の担任教諭と話していても弟の話になることが多く、「心身ともに弟との距離がずっと近かった」という。弟との会話は難しく、かんしゃくを起こす弟を体を張ってなだめる時もある。こうしたケアは一般に「見守り」などと表現されるが、清崎さんは「あくまで私はヤングケアラーの一人。ケアの内容も受け止め方も人それぞれ」と話す。プロジェクトで伝えたいのは「ケアの多様性」だという。

 母1人で子ども3人を育てる家庭で、長女の清崎さんは家事や弟の入浴を手伝う時もあった。家のために友達からの遊びの誘いを断るなど、家族のケアを負担に感じることもあったが、「当たり前にやってきたことなので、ヤングケアラーという言葉にピンとこなかった」と振り返る。それでも、今回のプロジェクトを通して「『ヤングケアラー』などの言葉でひとくくりにできない不安や生きづらさを打ち明けやすい世の中にしていきたい」と話す。

 厚生労働省と文部科学省は5月、ヤングケアラー支援について報告書をまとめた。内容は、福祉や医療、教育など各分野の専門職への啓発や研修の実施▽オンライン相談体制の整備促進▽中高生へのヤングケアラーの啓発――などだ。

 今回のプロジェクトの事務局を担う立命館大学の斎藤真緒教授(家族社会学)は「国や自治体が支援に向け動いているが、その過程にもっと当事者の声を聴く姿勢が必要なのではないか。継続的に声を聴くことが、支援策を見直したり、改善したりする際に大事になってくるはずだ」と当事者参加の必要性を説く。斎藤教授はこれまで、男性介護者の研究や大学生ケアラーの集いを主宰するなどしてきた。「当事者だからこそ体験を踏まえ、使いやすい、使いたい支援を考えられる面もある。プロジェクトを通して、家族ケアを気軽に話せない社会の問題についても考えていきたい」と話す。

 プロジェクトは、家族ケアの内容や負担の大きさは一切問わず、参加を呼びかけている。オンラインでの交流などを経て、参加者たちの意見を年度内に「政策提言」としてまとめたいという。地域や仕事で、子どもや若者と関わっている人も「サポーター」として参加できる。問い合わせはプロジェクト事務局(carersactionresearchproject@gmail.com)へ。

【ヤングケアラー】

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