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工藤会トップに死刑判決 市民襲撃への厳しい糾弾

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 北九州市に拠点を置く特定危険指定暴力団「工藤会」トップの野村悟被告に、福岡地裁が殺人罪などで死刑判決を言い渡した。

 指定暴力団トップを極刑とする司法判断は初めてという。罪に問われた四つの事件では、いずれも市民が標的となった。その非道さを厳しく糾弾するものだ。

 野村被告が事件に関与していたことを明示する証拠はなく、裁判では実行役に襲撃を指示していたかどうかが争われていた。

 判決は、全ての事件で首謀者だったと認定した。組織内の序列は厳格であり、トップの意向がなければ配下の組員が動くことは考えにくいとの判断だ。

 命を奪われた被害者は1人だったが、暴力団による組織的、計画的な犯罪であり、悪質性が極めて高いと指摘した。

 工藤会は、暴力団追放を掲げる飲食店に手投げ弾を投げ込むなど、市民にも危害を加えてきた。

 警察や検察は7年前、トップを摘発する「頂上作戦」に乗り出した。暴力団は上位者の指示が絶対とされ、弱体化させるには最も有効な手立てだ。

 4事件とは別に、工藤会への上納金について、野村被告を所得税脱税の罪でも起訴している。

 民事裁判では、暴力団による被害について、トップの責任を認める判断が定着しつつある。特殊詐欺が暴力団の資金源になる中、損害賠償を命じた判決が最高裁で確定している。

 今回は、より厳密な立証が求められる刑事事件での判決だけに、今後の暴力団捜査に与える影響は大きい。

 1992年に暴力団対策法が施行されて以降、活動を封じ込める取り組みが進んできた。

 全国の暴力団構成員らは、ここ10年で6割以上減った。だが、組同士の抗争が続き、市民が巻き添えになる懸念は消えない。飲食店が、みかじめ料を要求されるなど、金銭的な被害もある。

 暴力団だけでなく、組織の実態がつかみにくい犯罪グループの存在も問題になっている。

 警察は引き続き、地域と連携しながら取り締まりに全力を挙げる必要がある。反社会的行為をなくすには、組織を離れた人の社会復帰を支える仕組みも不可欠だ。

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