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谷垣禎一さん、車いすでも諦めない 「自助」とパラリンピック

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「『よし、こうすれば俺も頑張れるんだ』。そういう気持ちを持つことが大事です」と語る谷垣禎一さん=東京都内で2021年7月13日、宮武祐希撮影
「『よし、こうすれば俺も頑張れるんだ』。そういう気持ちを持つことが大事です」と語る谷垣禎一さん=東京都内で2021年7月13日、宮武祐希撮影

 不慮の事故から5年がたった。電動車いすが欠かせない生活を送っている。

 「政治家として、障害者という存在について一定の理解をしていたつもりでした。でも、頭で考えていたのと、自分が現実に障害者になるというのは全然違うことでした。『ああ、こういうのが障害者なんだ』と」

 第24代自民党総裁で元衆院議員の谷垣禎一さん(76)。弁護士から政界に転じ、財務相、国土交通相などを歴任した。滑舌の良い話しぶりは健在だが、発音しづらい時もあるのか言葉に詰まることがある。さらに手や首が意思に反して不規則に動いてしまう。

 通い詰めた永田町を離れ、一日の大半を東京都内の自宅で過ごす。朝起きると、サイクリングウエアを身にまとう。「体が自由に動かないものですから伸縮性のあるものでないと着られない。昔、自転車に乗っていてたくさんありますので。年ですから、後は余生をどう送るかということですよ。(障害を)割り切ったわけではないけれど、割り切るよりしょうがない」

「あの時、政局を考えたのがいけなかった」

 谷垣さんは2016年7月16日、サイクリング中に転倒し、首にある頸髄(けいずい)を損傷した。

 自転車は子どもの頃から好きだった。学生時代は自宅から大学までの十数キロを毎日、自転車で通った。自転車関連の議員連盟やサイクリング団体の会長を長年務め、13年には自転車を上手に使いこなす著名人の称号「自転車名人」の5代目に選ばれた。レース用のロードバイクなどを数台持ち、忙しい政治日程の合間を縫って、1日で90キロ近くを走ることもあった。

 「自転車に乗っている時に『消費税をいつ上げようか』なんて考えているようでは駄目なんです。乗っている間は路面を見て走ることに全精力を傾ける。それが自転車のいいところ。そう言っていたくせにですよ。あの時はね。『この後の政局はちょっと難しくなるかな』と柄にもないことを考えていた。それがいけなかったんだなあ」

 事故当時、自民党幹事長だった。16年7月10日投開票の参院選では、安倍晋三首相(当時)が勝敗ラインとした「与党で改選過半数」を大きく上回る議席を得て、衆参で改憲勢力が3分の2を超えた。ほっとしたのもつかの間。舛添要一氏の辞職に伴う東京都知事選が14日に告示され、31日の投開票に向けた選挙戦が始まっていた。

 しかも自民党は、東京都連に反発して立候補した小池百合子氏と、都連が中心となって担ぎ出した元総務相の増田寛也氏との分裂選挙になった。都知事選の構図は、野党4党が推すジャーナリストの鳥越俊太郎氏と三つどもえの戦い。谷垣さんは告示日から応援演説をこなすなど精力的に動いていたが、わずかな空き時間ができた。疲れた頭をリフレッシュしたい。そんな思いで自転車に乗ったはずだった。

 「あの日はね、…

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