障害のある人が大学受験に不安なく臨める環境を整えたい。
文部科学省は、障害のある受験生が不利にならないための配慮を尽くすよう、各大学に求める方針を示した。
2025年春に入学を目指す人の受験に合わせ、入試実施要項を見直す。受験生のニーズを事前に把握して対応するため、支援を担当する部署や相談窓口などを学内に設けることを促す。
16年4月に施行された障害者差別解消法は、社会のバリアーを可能な限り取り除く「合理的配慮」を、国や自治体に義務付けた。
法整備をきっかけとして、状況は改善した。日本学生支援機構などによると、支援の対象となった受験生の数は施行前よりも大幅に増えた。大半の大学では、車椅子の使用や別室での受験などが認められている。
障害があることを理由に受験そのものが認められない「門前払い」を受けるケースもかつては見受けられたが、今では少なくなってきている。
ただ、大学によって、支援の内容には差が残っている。
障害者が志望校を決めるうえで、事前に相談ができるか、どのような支援を受けられるかという情報は欠かせない。しかし、入試要項にもホームページにも記載していない大学がまだある。
視覚障害があったり、読み書きに困難を抱えたりする人たち向けに、音声による出題と解答ができる仕組みを導入している大学は限られている。
今年5月には障害者差別解消法が改正され、民間事業者にも合理的配慮が義務付けられた。私立を含め、全ての大学が取り組みを強化しなければならない。
障害のある学生は約3万8000人を数える。10年前の5倍以上に増えたものの、全学生に占める割合は1%にすぎない。10%を超す米国や英国と比べれば、著しく少ない。
進学の意欲を持ち、学力があるにもかかわらず、受け入れ準備が整っていないためにあきらめざるを得ないのでは、共生社会とは言えない。
学びたいという気持ちを社会全体で尊重し、後押ししていく必要がある。