学生プロレス今こそ 棚橋弘至さん、レイザーラモンが後輩に贈る言葉

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
RWFからプロレス界の頂点に立った棚橋弘至選手=東京都文京区の東京ドームで2021年7月25日、新日本プロレス提供 拡大
RWFからプロレス界の頂点に立った棚橋弘至選手=東京都文京区の東京ドームで2021年7月25日、新日本プロレス提供

 プロレス界を代表するスター選手の棚橋弘至さん(44)=新日本プロレス=は、立命館プロレス同好会(RWF)の出身だ。人気お笑いコンビ・レイザーラモンとして活躍するRGさん(47)はRWFで棚橋さんの先輩に当たり、HGさん(45)は同志社プロレス同盟(DWA)のエースとして棚橋さんと名勝負を繰り広げた。学生プロレスの聖地・京都の今を追った「コロナ禍にドロップキック 『リングに立ちたい』学生プロレスの苦闘」の番外編として、3氏が学生プロレスの魅力を紹介し、コロナ禍で苦闘する学生たちにエールを送った。【聞き手・千葉紀和】

好きこそ物の上手なれ 棚橋弘至さん

 ――なぜ学生プロレスを。

 ◆高校時代にプロレス熱が高じて、友達3人で休み時間に技の掛け合いをしていました。高校は野球部で、立命館大でも野球かトライアスロンをやろうと思っていましたが、新入生を勧誘する各サークルのブースが並ぶ中で一番目立っていたのがRWFでした。思わずブースに座り、当時の会長に「入ったらプロレスラーになれるんですか」と尋ねてみたら、「おう、なれるぞ」と言われ、それを信じてしまって。実はウソだったんですけどね、私がRWF出身のプロレスラー第1号ですから。

RWFに在籍し、筋トレに励んでいた立命館大時代の棚橋弘至さん(本人提供) 拡大
RWFに在籍し、筋トレに励んでいた立命館大時代の棚橋弘至さん(本人提供)

 初めは何の練習をしていいのか分からず、とにかく体を鍛えました。ボディービルの本を読みあさり、食事も食べまくって筋肉を増やして。入学時68キロだったのが、1年生の終わりに80キロになりました。卒業時は90キロです。アマレスも始めて4年生でインカレにも出場しました。大学生活ってコンパや、女子が多いサークルに憧れますよね。学内でプロレスをするのは気恥ずかしさもありましたが、肉体の変化がうれしくて、「見て見て」と自己顕示欲に拍車がかかりました。

 ――学生プロレスの魅力とは。

 ◆詳しくなくても会場に来たら楽しめるのがプロレスですが、学生プロレスはもっと知らない人も楽しめます。実況と解説の音声が会場で聞こえるのが特徴の一つ。だから予備知識がなくても「今何をやっている」「この選手はこういう人」と、実況とリング上がシンクロしながら楽しむことができます。「今、攻めているこの選手、実は単位が全く取れていません!」とかね。プロレスという競技体系を使って、みんなが楽しめるエンターテインメントの形ができあがっている点が魅力です。

 ――印象に残る出来事は。

 ◆京都統一ヘビー級王者だった3年生の学園祭で、ベルトを賭けて同級生と60分勝負で引き分けの試合をしたことです。学生プロレスで60分フルタイムを経験している人は、ほぼいないのでは。体力も必要ですが、どうすればお客さんを長時間、飽きさせないかを当時から考え抜いていました。HGさんともベルトを賭けて戦いましたね。あの人の身体能力は学生プロレス界で群を抜いていました。

 ――プロレス界では学生プロレス出身を隠す傾向もあると聞きます。

 ◆私も入門当初は隠していました。(当時新日本プロレスの)長州力さんが学生プロレスを嫌いだと知っていましたからね。プロ側からはプロレスを茶化(ちゃか)して、さげすむものに見える面があるかもしれません。でも、学生側はプロレスが大好きで、裾野を広げる役割を果たしていると思います。

 プロレス界には、アマレスや柔道で日本有数の実績を持つ体育会エリートが多くいます。でも、私は学生プロレス出身であることをちっとも恥じていません。プロレスの試合は痛いし、キツいし、ダメージも残るんですが、私がプロレスに感じる一番の感情は「喜び」「楽しさ」です。それはルーツが学生プロレスで、本当に楽しかったから。プロレスに限らず、「好きこそ物の上手なれ」です。それに「体育会エリートには負けない。厳しい練習でも絶対に潰れない」という反骨心の源にもなりました。

 ――後輩たちに一言。

 ◆学生プロレスは何より面白い。激しさの中に笑いがあって、見ている方たちを楽しい気持ちにさせてくれます。今は試合もできず辛い状況ではありますが、学生たちが担っている役割、これからできることは、閉塞(へいそく)感にあふれた世の中でとても貴重です。だから、自信を持ってほしい。本来、非日常であるプロレスが日常に感じられるというのは不思議なことですが、みんなでコロナ禍を脱出し、学生プロレスを普通に大学で楽しめる状況が一日も早く戻ってきてほしいですね。

自分の基礎、確立された レイザーラモン

 ――なぜ学生プロレスを。

学生プロレス時代のレイザーラモンHGさん(右)、RGさん(吉本興業提供) 拡大
学生プロレス時代のレイザーラモンHGさん(右)、RGさん(吉本興業提供)

 RG (姿勢が)攻めていたからです。立命館大に入学後、音楽のバンドや劇団などを一通り試して、最も攻めていたのがRWFでした。小学生の頃から祖父と一緒にプロレス中継を見ていたのも大きかった。

 HG プロレス好きで、自分でもやってみたかったからです。高校時代は陸上部の高跳びのマットを借りて仲間と(大技の)タイガードライバーの練習をしていました。同志社大に入学後は日本拳法部に入り、キャンパスライフに憧れもあってテニスサークルにも入ったんですが、僕には物足りなくて。1年生の夏休み前に初めて学内でDWAの試合を見たらレベルが高くて、すぐ入部しました。

 ――学生プロレスの魅力とは。

 RG プロレスというプロしかできないジャンルを本当のリングでできたこと。プロへの近道ですから。

 ――プロレスラーを目指していたのですか。

 RG いや全然。

 HG 誰がプロへの近道やねん。僕は一時、プロを目指していました。でも、1学年下に棚橋(弘至選手)がいて、彼が在学中、新日本プロレスの入門テストに2回落ちたんです。当時から体つきも華も圧倒的でしたから、「あいつが無理なら仕方ない」と諦めてしまいました。でも、彼は3回目で受かったんです。

人気お笑いコンビとして活躍するレイザーラモンHGさん(左)、RGさん(吉本興業提供) 拡大
人気お笑いコンビとして活躍するレイザーラモンHGさん(左)、RGさん(吉本興業提供)

 学生プロレスの魅力は、いろんなエンターテインメントが入っていること。(凶器や反則ありの)デスマッチもあれば、(空中戦主体の)ルチャもある。お笑いマッチは社会風刺で、当時は(オウム真理教の教祖だった)麻原彰晃のモノマネなんかをしていました。

 ――印象に残る出来事は。

 RG 頑張っているのに人気の出ない人が、学生プロレスの世界にもいます。それを後輩が盛り上げる土壌がありました。3年生なってもくすぶり続けていたのが、僕と友人。その二人が、同志社の大エースだったHGのコンビとタッグマッチでぶつかって京都統一タッグのベルトを獲得したことです。ただ勝ったからではなく、試合も盛り上げて、みんなで取ることができたので感動しましたね。

 HG 確かに覚えています。京都統一ヘビー級王者だった僕は、常にベルト戦線にいましたが、RGさんはコミック路線で。中盤で良い仕事をするバイプレーヤーだったので、普段試合をすることがなかった。でも、実況と解説で活躍するしゃべりのエースでした。

 RG 実況で気をつけていたことは、学生プロレスは技のミスが起きがち。その失敗を笑う文化があったのですが、それが大嫌いで。失敗をいじって笑いを取るのは簡単ですから。今なぜ失敗したのか、相手がこう防御したから技がかからなかったなど、理由をしっかり説明するフォロー実況を始めたら好評でした。

 HG 人を傷つけない笑いに対応したんやな。

 ――学生プロレスの経験は生きていますか。

 HG 学生プロレスをしていなかったら芸人になっていません。僕たちの出会いはもちろん、プロレスをしながら社会風刺するネタでデビューして、本当のプロレスのリングにも上がらせてもらいました。ずっと今につながっています。

 RG 本当に好きなものが形作られた、自分の基礎が確立された期間でした。

 ――後輩たちに一言。

 RG コロナ禍に加え、少子化で、大学のキャンパスもどんどん分かれて、学生が集まる活動が物理的に難しくなってきていますよね。今こそスター、カリスマの出現を待ちたいなと。

 HG 大変な状況で心配しています。でも、学生プロレスは苦しい時こそ斬新なアイデアが出る。他人ができない経験は将来必ず生きるので、いろんなチャレンジをしてほしいですね。

たなはし・ひろし

 1976年、岐阜県出身。99年、立命館大法学部卒。「100年に一人の逸材」の通称で人気を集める。現IWGP USヘビー級王者、プロレス大賞MVPなど。「全力で生きる技術」など著書多数。

公式ブログは(https://ameblo.jp/highfly-tana/

レイザーラモン

 1997年結成のお笑いコンビ。吉本興業所属。HGは75年、兵庫県出身。同志社大卒。RGは74年、熊本県出身。立命館大卒。第21回「ABCお笑い新人グランプリ」審査員特別賞など。エンターテインメント要素の強いプロレス「ハッスル」でも活躍。

公式チャンネルは(https://www.youtube.com/channel/UCls70n_ydZjkI3wohUU0R4A

あわせて読みたい

注目の特集