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少子化考

世界各地を記者が歩きながら、少子化社会の課題や、子どもを持つ意味、家族の幸せとは何かを考えます。

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イスラエル、出生率3超えの秘密 日本とは大きく違う子育て事情とは

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自宅のバルコニーに集まったコーヘンさん一家。子供は上は11歳、下は1歳の男の子4人で、いつもにぎやかだ=イスラエル中部モディーンで2021年6月20日午後8時23分、三木幸治撮影
自宅のバルコニーに集まったコーヘンさん一家。子供は上は11歳、下は1歳の男の子4人で、いつもにぎやかだ=イスラエル中部モディーンで2021年6月20日午後8時23分、三木幸治撮影

 中東・イスラエルでは、2019年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数に相当)が3・01に達し、少子化に悩む日本の1・36はもとより、少子化対策の優等生とされるフランスの1・83などを大きく上回る。先進国38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)でも2位のメキシコ以下を引き離すトップの数字だ。背景には何があるのか。【エルサレム三木幸治】

 イスラエル中部モディーンの閑静な住宅街。広さ約260平方メートルの新しいマンションの一室で、ユダヤ人のギル・コーヘンさん(43)と妻のナタリーさん(41)は男の子4人と暮らす。一番上の子供は11歳。下はまだ1歳だ。「大家族は私の夢でした」。ナタリーさんは話す。

 夫婦は共働きで、ギルさんはイスラエル財務省、ナタリーさんは障害者支援のNGOに勤務する。オフィスは2人とも、車で片道約1時間半かかるエルサレムだ。朝はナタリーさんが午前6時半に出勤。ギルさんは子供を保育園や学校に連れて行った後、出勤する。夕方にはナタリーさんが子供を迎えに行き、夕食の準備をしたり、英語や柔道など習いごとの送り迎えをしたりする。目が回るほど忙しい毎日だ。

 世界では経済が発展し、女性の高学歴化や社会参加が進むほど、子供の数は減る傾向が強い。だが、欧州、中東、アフリカなどから移り住み、イスラエルの人口の74%を占めるユダヤ人には当てはまらない。ユダヤ人女性の合計特殊出生率は1995~99年は2・62(平均値)だったが、14年には3・11に上昇するという異例の動きをしている。

 人口の約2割を占め、以前からこの土地に住むアラブ人女性の合計特殊出生率が、60~64年は9・23(同)だったのが、14年には3・35に低下したのとは対照的だ。イスラエル中央統計局が昨年発表した調査によると、ユダヤ人のあまり宗教的でない世俗派の女性は、67%が「3人以上の子供が欲しい」と答えている。

 イスラエルの人口は現在、約933万人。シンクタンク「タウブセンター」によると、約20年後の40年には、約1・4倍の1320万人に達する見通しだ。

 この国では、いったい何が起きているのだろうか。

イスラエル社会を支える大家族

 ギルさんとナタリーさんの2人は、多忙な毎日を送りながら、なぜ子供4人を育てることができるのだろうか。理由の一つは、「親族の絆」だ。ユダヤ教徒は…

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