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この国はどこへ コロナの時代に グローバル経済読み解く 法政大教授・水野和夫さん 67歳

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水野和夫氏=大西岳彦撮影
水野和夫氏=大西岳彦撮影

貨幣が果実生まない「石」に

 新型コロナウイルスの第5波の感染拡大により、緊急事態宣言は21都道府県に広がった。景気の落ち込みはますます深刻さを増し、日本経済がコロナ禍前の水準に回復するのは早くても2022年度以降になる、と専門家は予測する。ポストコロナの時代を迎え、近年グローバル化が進んだ経済はどこへ向かうのか。「資本主義の終焉(しゅうえん)と歴史の危機」などの著書がある法政大教授(経済学)の水野和夫さん(67)にそう尋ねると、いきなり刺激的な見方を口にした。

 「コロナ禍で多くの先進国は国債を大量に発行して巨額の財政出動をしていますが、金利は上昇していません。これは貨幣が果実を生む種ではなく、自己増殖しない『石』になったことを意味しています」。水野さんの声が、夏休み中の大学の研究室に朗々と響く。

 経済の基本からすれば、国債を大量に増発すれば、市場価値は下がり、国債の利回りが高くなければ投資家は買ってくれない。市場で取引される10年物国債の利回りは長期金利の指標とされており、金利は上がるはずなのだ。だが、実際は逆の動きを見せる。長期金利は低下し、8月4日には約8カ月ぶりに0%をつけた。米国など海外市場でも長期金利は低下圧力が強まっており、これまでの市場の常識とはかけ離れているのだ。

 水野さんは、現在の状況をこう説明する。「近代社会では貨幣は種子であり、使う(投資する)ことで果実を生む。それが今日より明日、明日より明後日という、よりよい生活(果実)をもたらしてきました。発展途上国はまだまだ貧しいのですが、先進国はもうこれ以上果実を生まなくても生活できる状況になり、だから金利が上がらないのです」。長期金利は、お金を借りて工場を造ったり、マイホームを買ったりという投資をしたい企業や個人が多ければ、上昇する。だが、上がらないということは、それだけ需要がないことを意味する。お金を必要とする人がいないので金利は上がらず、結果として使われない貨幣は「石」のような存在になってしまったというのだ。

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