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地域の社会活動、応援 広告活用し課題解決目指す 大森一弘さん=中川悠 /大阪

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「広告効果と社会性の両立は、僕にとっても実験的なチャレンジ」と語る大森さん 拡大
「広告効果と社会性の両立は、僕にとっても実験的なチャレンジ」と語る大森さん

 「快適すぎて動けなくなる」というキャッチコピーを目にしたことがあるかもしれない。米国発の人気ソファだが、日本で販売を手掛ける大阪の企業がユニークな試みを始めた。収益から1年間で最大3億円を確保。地域、子ども、障がい福祉などの分野で活動するNPO法人やボランティア団体に協賛広告を出し、スポンサーとして支えるプロジェクトだ。

 大阪市中央区に本社を置く企業「ウェブシャーク」。古着や雑貨の店として1996年に創業し、ウェブなどの分野に進出。2014年から伸縮性のソファ「Yogibo(ヨギボー)」の日本での独占販売権を取得し、事業を拡大してきた。「企業活動の一部である広告の仕組みを活用し、持続的な社会課題の解決につなげる仕組みが作れないかと考えました」。同社取締役の大森一弘さん(40)は語る。

 大森さんは自身もウェブマーケティングやインターン教育を進める企業を経営してきた。多くの企業人や大学生と交流する中で、家庭環境による教育格差や発達障がいなどに関心を深めた。社会活動団体の収益源は、不安定になりがちだ。一方、企業による社会貢献は一時的なものが多い。

 大森さんは自身も経験を積んだ「企業からの広告出稿」という仕組みを役立てられないかと、ずっと構想を練っていた。タイミング良く、ウェブシャーク社がスポンサーとして社会課題に取り組む団体を応援する計画を立案。それを耳にした大森さんは「自分自身がやりたかったことだ」とプロジェクトリーダーとして名乗りを上げ、同社で働き始めた。

 今年7月に発表したプロジェクト名は「TANZAQ(タンザク)」(https://tanzaq.jp/)。七夕のように、支援を受ける団体が理想やビジョンを短冊に書くと叶(かな)えられる――。そんな夢を描きながら、大森さんは数十の団体のサポートに奔走している。

 特徴は、単なる資金助成ではなく、ウェブの活用など支援する側のノウハウも生かすことだ。

 例えば、少年院から退院した若者の社会復帰に取り組む団体は、生活支援や農業などさまざまな活動をしている。しかし、支援者や若者がどのような思いで、どのように対話しているのかは知られていない。それは同じ境遇の若者、同様の活動に取り組む団体、支援したい企業などにとって学びのヒントにあふれているはずだ。大森さんは「ひとりひとりの言葉」を発信するホームページのアイデアを提案。アドバイスや資金支援を行うことにした。

 里親制度の啓発活動に取り組む団体には、里親のなり手が増えない課題があった。そこで「里親になった時の困りごと」の解決のヒントを集めたホームページの作成を提案した。「里親になる意思を持つ人の不安に応えたい」という団体の思いに寄り添った。新米、ベテランの里親のQ&Aをまとめた内容だ。

 さらに大森さんは、新しいチャレンジとして「ソーシャルグッドクーポン」の取り組みも進めている。人気商品の知名度の高さを活用し、社会活動団体を通じて購入すると売り上げの5%がその団体に送金される。1年間に500団体の連携を目指している。「社会課題はこれからももっと多様化すると思う。だから、企業の広告活動を通して社会課題が解決していく選択肢を作りたい」


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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