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予算をいくら増やしても、新型コロナウイルス禍に苦しむ国民に行き渡らなければ意味がない。
来年度予算の編成に向けた各省庁の要求が出そろい、総額は111兆円台と過去最大になった。
政府は昨年来、大規模な経済対策を繰り返してきた。だが困窮から抜け出せていない国民や事業者は多い。病床の逼迫(ひっぱく)も一向に解消されていない。
今回の要求にも疑問が多い。
まずコロナ便乗としか思えないものが目立つ。国土交通省は「ポストコロナの経済好循環を加速させる」とインフラ整備の推進を求めた。だが中身は、整備新幹線や地方の道路など費用対効果が疑問視される従来型の公共事業だ。
防災などの国土強靱(きょうじん)化事業を、金額を示さない「事項要求」にしたことも理解に苦しむ。要求の内容や根拠があいまいでは、防災に名を借りた非効率な事業が紛れ込みかねない。
政府が将来の経済成長の柱と位置づけるデジタル化などでも要求が相次いだ。感染収束のめどが立たない今、優先すべき分野は、暮らしや医療への支援のはずだ。
さらに問題なのは、今年度の補正予算の編成も「規模ありき」で進んでいることだ。
菅義偉首相は今週、補正に盛り込む経済対策の検討を自民党に指示した。具体的な内容の議論もないまま、党内では既に20兆~30兆円の大型対策を求める声が相次いでいる。衆院選のアピール材料とする思惑なのだろう。
政府はこれまで、当初予算から漏れた要求を救済する「抜け道」として補正を使ってきた。今回も成長戦略などと称してコロナと関連が乏しい事業を並べ立て、大盤振る舞いするようでは論外だ。
国と地方の借金は合計で1200兆円にも膨れ上がっている。つけを回される将来世代の負担は重くなるばかりである。
来年から団塊の世代が75歳以上になり始める。このため、医療など社会保障費の予算要求は過去最大になった。借金漬けのまま超高齢社会を乗り切れるか心配だ。
昨年度使い切れなかった予算は30兆円超にも上る。不要不急の事業が多かったからだ。今後の編成で抜本的に見直す必要がある。コロナ下こそ精査が欠かせない。