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プロ野球・密着中

激しい競争を勝ち抜き、1軍での活躍を目指す若手が今、何に取り組み、何を考えているか。球団担当記者が追いかけます。

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西武・岸潤一郎/3 明徳義塾に帰った夏、馬淵監督との「延長戦」

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2014年夏の甲子園の大阪桐蔭戦で九回2死一塁から左越え2点本塁打を放つ岸潤一郎=津村豊和撮影
2014年夏の甲子園の大阪桐蔭戦で九回2死一塁から左越え2点本塁打を放つ岸潤一郎=津村豊和撮影

 プロ野球の厳しい世界で活躍を目指す若手が今、何を考えているのか。担当記者が一人の選手を追いかける「プロ野球・密着中」。前回、プロ入り前から支えてくれている妻への思いを語った西武・岸潤一郎外野手(24)は今回、高知・明徳義塾高卒業後、同校の馬淵史郎監督(65)と過ごした「ある夏」のエピソードを明かした。(次回は9月下旬公開予定です)

 「初球」を打つには相当な覚悟がいる。技術面でも精神面でも、一振りで仕留める能力が求められる。「積極的」とも表現される初球打ちだが、岸はかぶりを振る。「1球見て(タイミングを)合わせるという技術は僕には無いので。空振りでもファウルでもいいし、振っていって合わせられたら」。一球たりとも無駄にしないという信念がある。

 8月20日のオリックス戦(京セラ)。相手のエース・山本由伸の初球の直球を左翼席に運んだ。同22日の7号3ランも初球を捉えたもの。6月の2本の先頭打者本塁打も初球だった。

 7年前の夏。高校時代最後の打席も初球だった。2014年、明徳義塾高3年夏の甲子園2回戦の大阪桐蔭戦。1―5で迎えた九回2死一塁から、初球を左翼席へ運んだ。追い上げも及ばず敗れたものの、計4度出場した甲子園の最終打席で本塁打を打つという巡り合わせ。「甲子園の申し子」の呼び名を決定的にした一打だった。

 「もう、この子はすぐに高校野球でも出られるなという感じやった。センスがあるというか、まあ器用なんですよ、とにかく。ボールを扱わせてもバットを扱わせてもね」。岸の中学時代のプレーを見た明徳義塾の馬淵監督は活躍を確信した。入部直後の練習試合からすぐに主軸で起用。1年夏の甲子園でも4番に据えた。

 岸から見た馬淵監督は? 「優しいッスよ。何もせんかったら」と笑う。「もちろんすごいことは、僕が言わなくてもみんな知っている。筋を通す人。1本、自分の中に芯がある人なので。それと違うことは言わないし、しないし。試合前のミーティングもそう。相手によって『こうやるぞ』と決めたら、それをやる」

 岸が、馬淵監督の展開を見通す力を実感したのが2年夏の3回戦の大阪桐蔭戦だ。1学年上の森友哉(現西武)ら強打者ぞろいの打線相手に先発登板することになったエースの岸に馬淵監督は試合前、「お前が3点以内に抑えたら勝たせたる」と言った。

 岸は一回表、相手の先頭打者にいきなりランニング本塁打を許したが、「(馬淵監督に)そう言われたことによって動揺とかなかった。あと2点取られてもいいやろって思って投げていた」。馬淵監督は「あいつは制球が良かったからね。ここに投げろって言ったらだいたい投げられる男やった。それと球威もあったしね。だから、失点は計算できましたね」。岸の失点は初回の1点だけで、前年優勝校に5―1で勝利。2人ともこれが「一番印象深い試合」と振り返った。

 普通であれば選手と監督としての関係は3年間で終わる。だが、この2人には「その後」があった。大学時代、…

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