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アフガン政権崩壊

イスラム主義組織タリバンが2021年8月15日、首都カブールを制圧し、勝利宣言。ガニ政権が崩壊しました。

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SNSも駆使するタリバン 強硬派集団の変貌を識者に聞いた

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実権を掌握した後、初めて開いた記者会見で記者と握手するタリバンのザビウラ・ムジャヒド報道担当者=カブールで2021年8月17日、AP
実権を掌握した後、初めて開いた記者会見で記者と握手するタリバンのザビウラ・ムジャヒド報道担当者=カブールで2021年8月17日、AP

 アフガニスタンの実権を掌握したイスラム主義組織タリバン。1996~2001年に政権を担った際は、イスラム原理主義に基づく極端な政策を行い、国際的に孤立した。果たしてタリバンは変わったのか。アフガンやパキスタンの地域研究を専門とする東京外国語大学の登利谷正人講師(40)に聞いた。【聞き手・金子淳】

 ――タリバンの変化を感じますか。

 明確に変わったのはメディア戦略だ。前回のタリバン政権下ではテレビが禁止されていたため、指導層の一部は顔も分からない状況だった。今回は幹部がSNSを駆使し、国内外のテレビなどにも出ている。この点が明らかに違う。

 また、実は指導層には高学歴の人物が多い。「教育水準の低い前近代的な人たち」というイメージが強いかもしれないが、実際はパキスタンやサウジアラビアなどの著名なマドラサ(イスラム教神学校)や大学などで教育を受け、修士号や博士号を取った幹部もいる。現地語のほかにも英語やアラビア語、ウルドゥー語などの外国語に堪能な幹部も複数存在する。

 ――少数派や女性の人権に対する姿勢は?

 前回はイスラム教少数派シーア派を信仰するハザラ人にはあからさまに厳しかったが、今回はイスラム教徒の同胞として守ろうとしている。首都カブールの制圧後、すぐに市内のハザラ人集住地区の代表者と協議して「安全を守る」と伝えた。ここはシーア派を異端視する過激派組織「イスラム国」(IS)系の「ISホラサン州」(IS-K)による自爆テロが多い場所だ。タリバンはこの地域を警備し、シーア派の宗教行事アシュラを行わせた。

少数派や女性の権利への配慮の様子も

 タリバンは最大民族パシュトゥン人が中心だが、指導層にはウズベク人やタジク人もいる。ビデオ声明ではウズベク語など少数派の言語も使っていた。こうした配慮は以前と大きく変わった点だ。

 また、かつては女性に対し、全身を覆うブルカの着用を義務づけていた。今回は髪を覆うヒジャブをかぶることは要求しているが、ブルカの着用は強制していない。女性の教育や就労も一律禁止するとは言っておらず、指導層が配慮していることが分かる。ただ、今後どこまで規制が厳しくなるのかは、治安や社会情勢にもよるので見通せない。

 ――タリバンが目指しているのは何でしょうか。

 国民が当たり前の生活を送れる状況をもたらすことが、タリバン政権の正統性につながる。カブール制圧後の声明でタリバン幹部は「これから、どう安定を維持し発展していくかが課題」「我々は試されている」と語っており、その点を理解しているはずだ。仮に国際的な国家承認を得られなくても、治安を確保し、海外からの支援や投資を通じて経済活動を安定させることを目指すだろう。

 ――どんな政治体制になるのでしょう。

 おそらく前回のタリバン政権と似たような形で、シューラ(評議会)を通じた統治になるのではないか。州、県ごとにシューラを設け、最高指導層のシューラが意見を吸い上げる形で決定を下すやり方だ。シューラのメンバーはイスラム教の学識者や地域の有力者らになると考えられる。また、前回は最高指導者の権限で法令を出し、従わせることもあった。この点も踏襲するのではないか。

テロ組織とは縁を切れるのか

 ――国連の報告書では、国際テロ組織アルカイダとのつながりが指摘されています。

 アフガンのアルカイダは元々、70~80年代にアフガンに侵攻した旧ソ連と戦ったアラブの義勇兵で、このころから、後にタリバンを結成するメンバーとも共闘していた。前回のタリバン政権下でも一緒に抵抗勢力と戦うなど、長く一緒に戦ってきた仲だ。双方のメンバー同士で姻戚関係を結ぶなど、ほぼ一体化しており、関係を絶つのは難しいだろう。

 ただ、ウサマ・ビンラディン容疑者(11年に米軍が殺害)がいたころと…

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