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森田芳光監督の「そろばんずく」(1986年)の衝撃は忘れられない。広告代理店の営業マンが、ライバルをやっつける。という筋立てを吹き飛ばすがごとく、全編を貫く遊び心たっぷりの映像。人気絶頂のとんねるずを起用しながら演技を封印、前衛映画のようなシュールさ。バブルの時代と呼応して鮮烈だった。森田監督は前年に文芸映画「それから」を撮ったばかり、なおさら驚いた。今思えば、フジテレビと東宝が組んだ夏休み映画でよくこんな企画が通ったものだ。
相米慎二監督の「ラブホテル」は85年公開だった。村木と名美のシリーズを描き続ける石井隆の脚本で、影を背負った情念の物語。相米監督の長回しのカメラが艶やかに男女の孤独と欲望をつかみ、幕切れ、階段ですれ違う女2人と桜吹雪の美しさが焼き付いている。相米作品では「セーラー服と機関銃」の薬師丸ひろ子、「魚影の群れ」の夏目雅子も輝いたが、速水典子の名前も強烈に記憶された。
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