佐久間由衣 主演映画で「主人公になりにくいタイプ」の演じ方

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
「本音を口に出さない」というホリガイの役に挑んだ佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影 拡大
「本音を口に出さない」というホリガイの役に挑んだ佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影

 映画「君は永遠にそいつらより若い」が17日から全国で公開される。芥川賞作家・津村記久子のデビュー作を実写化し、心に傷を抱える若者たちの苦悩と再生を描く。主人公の一人で大学生のホリガイを演じた佐久間由衣は「寄り添うように優しい映画になった」と話す。前半は何気ない日常が続き、ホリガイは「本音を口に出さず、物語の主人公になりにくいタイプ」という難役だった。佐久間は自らが小学校で体験した出来事を振り返ったり、役作りではある工夫もしたりして挑んだ。

「できるだけ平和に暮らしたい」ホリガイ役

映画「君は永遠にそいつらより若い」でホリガイ役の佐久間由衣(右)とイノギ役の奈緒 Ⓒ「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会 拡大
映画「君は永遠にそいつらより若い」でホリガイ役の佐久間由衣(右)とイノギ役の奈緒 Ⓒ「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会

 児童福祉職への就職も決まり、ダラダラと日々を過すホリガイは、友人から代わりに出るよう頼まれた講義でイノギ(奈緒)と出会う。ともに時間を過ごし、絆を深めた2人は、ある日、それぞれの過去を打ち明ける。日常風景の中、若者たちが抱える欠落感や劣等感を、吉野竜平(りょうへい)監督が温かく包み込むように映し出す。

 ホリガイは長身で赤毛、ボーイッシュな風貌で、「変わり者」に見られているが、佐久間は「内面は地味な女の子」だとみる。「昔あった『イマヤマダ事件』のせいで、できるだけ平和に暮らしたいと思うようになりました。誰かが傷つくぐらいなら、その場の空気を読んでヘラヘラ笑ったり、自虐したりしてしまう。なかなか本音を口に出せないタイプ。物語の主人公にはなりにくいキャラクターだったので、演じるのは難しかったですね」

 「イマヤマダ事件」とは、小学生だったホリガイがクラスの男子から不当な理由で暴力を受けた出来事のこと。佐久間にも思い当たることがあったという。「実は私も小学生の時に同じような経験があって。けんかをしていた男の子をかばいに入ったら、自分が被害者になってしまいました」と明かす。「だから平和に暮らしたいホリガイの気持ちも分かるなって。でも、ヘラヘラはしないかな」

俳優の仕事について魅力を語る佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影 拡大
俳優の仕事について魅力を語る佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影

水筒の中まで細かく設定

 撮影前には、吉野監督とホリガイの「履歴書」を作った。愛読書や好きなテレビ番組、かばんの中身まで細かく設定した。水筒の中にまで思いをめぐらせ、「水筒を持っている子は可愛いよね」という監督の一言をヒントに「紅茶」にした。そうやって人物像をはっきりさせていった。「事前に設定しすぎると良くないという意見もありますが、今回は撮影前にしっかり決めたことで自然に演じられました」

 佐久間は、幼い頃から想像するのが好きだったという。「妄想したことをうまく伝えられなくて、家族からも『ちょっと変わった子』と言われていたんです。このお仕事を始めると、同じような人が多くて、うれしかったです」と笑う。

映画「君は永遠にそいつらより若い」のメインビジュアル Ⓒ「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会 拡大
映画「君は永遠にそいつらより若い」のメインビジュアル Ⓒ「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会

 初めてイノギと出会ったシーンで、「あっ、物語が始まる」という感覚になったという。「友情とか恋愛とかを超えた関係性で、『魂』でつながっている。奇跡のような出会い。そこまでお互いを知っているわけではないけど、本音をポロリとこぼしてしまう。そんな2人の関係はすごくうらやましい」と語る。

 大学での生活をユーモアを交えながら描く前半から一転、後半では不意に向けられる悪意や暴力など、世の中の理不尽さが顔をのぞかせる。イノギが経験した過去は凄惨(せいさん)で、ホリガイとの関係性に救いを感じていく。「誰もがいろんな悩みを持っている。でも、そんな人でも誰かのヒーローになれるし、人と関わる中で支えたり支えられたりして生きている。そんなことを考えながら演じていました」

 イノギや友人たちが抱える悲しみや怒りを知ったホリガイは、ただ誠実に耳を傾け、受け止める。わかりやすい「答え」を示すこととは一線を画する。「答えが聞けたほうが楽だし進みやすい。でも、生活をしていたら間違えることはあるし、いろんな経験から気づくこともいっぱいある。『こうである』というメッセージではなく、見た人がそれぞれ思いを重ねて、自分や誰かを思う時間ができる映画になったらいいなと思います」

映画「君は永遠にそいつらより若い」に主演する佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影 拡大
映画「君は永遠にそいつらより若い」に主演する佐久間由衣=大阪市北区で2021年8月10日、菱田諭士撮影

「出会ったことのない自分に出会う」

 2014年に俳優デビュー。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17年)でヒロインの親友役を演じて脚光を浴びた。舞台や映画でも着実にキャリアを積み、今年だけでもドラマ「ひきこもり先生」(NHK)や「彼女はキレイだった」(カンテレ)など出演作が相次ぐ。

 「反省点は都度ありますが、このお仕事がすごく好き」と笑顔を見せる。「出会ったことのない自分に出会う瞬間があります。その瞬間に伝わる『空気みたいなもの』がしっかりあって。最後はテレビの前や映画館のお客さんに届けたいんですけど、まずはその場にいる人に届けたい。『届いた』って思えた時は、すごくうれしくて、それがやる気につながっているんだと思います」

 東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほかで公開。【山下智子】

さくま・ゆい

 モデル活動を経て、2014年に俳優デビュー。15年の「トランジットガールズ」(フジテレビ)でドラマ初主演。映画、舞台、CMでも活躍。次回出演作に「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」(NHK、17日午後10時スタート)など。

あわせて読みたい

注目の特集