孫の死の真相を追った祖父の10年 いじめ訴訟和解後、命日に無念

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制服姿の中村真弥香さんと真弥香さんの父、健太郎さんの遺影を置いた仏壇の前で思いを語る祖父の幹年さん=鹿児島県出水市で2021年9月1日午前10時37分、樋口岳大撮影
制服姿の中村真弥香さんと真弥香さんの父、健太郎さんの遺影を置いた仏壇の前で思いを語る祖父の幹年さん=鹿児島県出水市で2021年9月1日午前10時37分、樋口岳大撮影

 「将来は看護師になってじいちゃんを助ける」。優しい孫娘が突然命を絶ってから10年がたった。中学校でのいじめが原因だと疑った祖父らは真相究明を訴え続け、市に損害賠償を求めた訴訟は6月に和解した。あの日から10年となる命日の1日、市が「陳謝する」との条項も含む和解が成立し、祖父は市関係者の来訪を待った。「仏壇に線香をあげ、真弥香にわびてほしい」。誠意を示してくれると思った。だが、誰も現れなかった。

 鹿児島県出水市立中2年だった中村真弥香さん(当時13歳)が、2011年9月1日の早朝、自宅近くで自ら命を絶った。

 10年がたった1日、遺族宅の仏壇の周囲には、真弥香さんの遺影や幼い頃に履いていた靴などが並べられていた。その前に座った祖父、幹年さん(71)は「和解まで10年もかかったのは、市が責任逃れを続けたせいだ」と語気を強めた。

第三者による再調査、市は応じず

 あの日は2学期の初日だった。真弥香さんは中学校の吹奏楽部で活動していたが、楽譜などがなくなったことがあり、遺族は「部活でいじめを受けていたのでは」と疑った。

 市教育委員会は校長らでつくる「事故調査委員会」と大学教授らによる「事故調査専門委員会」を設置。真弥香さんの死から約3カ月がたった11年11月末に「直接のきっかけとなる出来事は確認できなかった」とする報告書を公表した。しかし、調査を担った委員の名前も、詳しい議事内容も明らかにはされなかった。遺族は、公平中立に調査されたのか、確かめようがなかった。

 遺族は報告書の基になった在校生へのアンケート結果の開示を求める訴訟を起こし、鹿児島地裁は15年、市に部分開示を命じた。アンケートには「『きもい』と言われているところを見た」「『しゃべらないで』と言われていた」などいじめをうかがわせる記述が多数あった。遺族は、中立的な第三者による委員会で改めて調べるよう強く求めたが、市は応じなかった。

 真相究明を求めた幹年さんらは17年5月、市に1200万円の損害賠償を求めて鹿児島地裁に提訴。審理の中で地裁は、市教委が設置した二つの委員会の議事録などを出すよう命じた。提出さ…

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