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浜崎洋介、古川勝久、上田岳弘、長島有里枝、小田島恒志、マヒトゥ・ザ・ピーポーの各氏が交代でつむぐコラム。

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なし崩し的緊急事態宣言=浜崎洋介(批評家)

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 今年に入ってから緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が出ていない期間は、わずか3週間。常態化した緊急事態というのも矛盾だが、今や、その矛盾が日常となった。7月は旅行者(宿泊者)の数が3000万人を超え、8月中旬から都内の人出も増加に転じたという。その理由としては、ワクチン接種による死亡率の減少を考えることができるが、それが「ゼロコロナ」から「コロナとの共存」への政府の明確な戦略転換に繋(つな)がっているのかというと、はなはだ心もとない。政府は、自粛を要請しながらオリンピックを開催するという矛盾を晒(さら)しながら、ますます宣言の無効化をなし崩し的に加速しているだけのように見える。

 かつて、山本七平は「『空気』の研究」に続けて、「『水=通常性』の研究」という論考を書いていたが、今、眼(め)の前で起こっている出来事は、まさに一度極限まで膨張したコロナ自粛の「空気」が「水=通常性」によって腐蝕(ふしょく)されていく過程そのものだと言えよう。山本によれば、危機において「死の臨在」を感じさせるモノを排除するために生み出された集団の「空気」は、しかし、現実に「水」を差され続けることに…

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