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「時代の転換点は2016年だった」渡辺明名人が語る将棋界と名人戦

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第79期名人就位式で推戴状を手にする渡辺明名人=東京都文京区のホテル椿山荘東京で2021年7月16日午後6時17分、佐々木順一撮影
第79期名人就位式で推戴状を手にする渡辺明名人=東京都文京区のホテル椿山荘東京で2021年7月16日午後6時17分、佐々木順一撮影

 将棋界のトップ棋士、渡辺明名人(37)が、毎日新聞のオンラインイベント「渡辺明名人に聞く!『名人戦の世界』」に登場。ライバルの藤井聡太王位(19)、豊島将之竜王(31)、永瀬拓矢王座(29)の強さや人柄について、率直に胸の内を語りました。さらに将棋めしの裏話から、人気漫画「将棋の渡辺くん」(伊奈めぐみさん作)にも登場する趣味の「ぬい」のことまで。笑いに包まれたトークの一部をご紹介します。聞き手は毎日新聞学芸部の山村英樹記者。

最終局、勝敗のポイントは「封じ手」

 ――まず4勝1敗で初防衛した今年の「第79期名人戦七番勝負」の振り返りから。挑戦者はA級1期目の斎藤慎太郎八段でした。

 ◆斎藤八段とは過去の対戦数が少なく、タイトル戦も初めて。開幕前はどうなるかなと思っていました。去年は新型コロナウイルスの影響で開幕直前に電話で延期だと言われたりして、気をもむことが多かったんです。今年はイベントや大盤解説会こそできませんが、棋戦進行上は影響がなくて恵まれていると思っています。

 ――第1局を落として、3勝1敗で第5局を迎えましたね。

 ◆(棋譜を示しながら)皆さんに第5局の封じ手の局面を見ていただきたいと思います。後手の僕が8七歩と指したところですが、勝敗のポイントとなった場面です。斎藤さんは封じ手で、迷って8九金にされたようですが、実際は8七同金が良かったのかなという感想を持たれていました。封じ手のタイミングは巡り合わせ。自分で決められないので、その辺りが一つ大きな要素になったかな。

 ――2日制は封じ手が大きなポイントになりますね。

 ◆封じ手は、した方が若干有利なんですよ。1手先を知っているから。そこで、みんな持ち時間との兼ね合いを考えます。1時間を払ってまで封じ手をするかどうか。その次の1手を相手に決めさせた方が良い場合もある。ケース・バイ・ケースで、持ち時間にも、局面にも、相手にもよりますね。

 ――7月には名人就位式も終えました。

 ◆日程がずれこんだ去年は、就位式を終えたら10月でした。防衛してほっとしましたね。負けると、在位日数としては最短になってしまいましたからね。

「名人戦には縁がない」と思ったことも

 ――「記憶に残る名人戦」を三つ挙げていただきました。まずは1992年の第50期。中原誠名人が高橋道雄九段を4勝3敗で制し、防衛しました。

 ◆僕が初めてテレビで見た名人戦です。1984年生まれなので、8歳の時。将棋を覚えたのが6歳。当時、小学2年生で初段くらいだったと思います。

 ――次に95年の第53期名人戦。羽生善治名人が森下卓八段を4勝1敗で防衛しました。

 ◆第1局が名人戦史に残る大逆転でした。小学生の僕は東京都内の大盤解説会を親と一緒に見に行き、森下さんが勝ちそうだという解説を聞いて帰りました。まだインターネット中継もないので、結果を知るすべがない。対局が長引いて翌日の朝刊にも結果が入らなかったら、新聞社に電話をして「どっちが勝ちましたか」と聞く時代でした。それで羽生さんが勝ったと聞いてすごく驚きましたね。

 ――そして、2016年の第74期。

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