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これで少数民族や女性の権利が守られるのか。懸念を抱かざるを得ない。
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが、暫定政権の主要メンバーを発表した。閣僚など33のポストすべてにタリバンの幹部を充てた。
首都カブール掌握後、タリバンは、国内のさまざまな民族や政治勢力の代表を取り込んだ「包括的な政権」を作ると約束した。しかし、少数民族出身者や女性は起用しなかった。
かつて宗教警察の役割を果たし、人々から恐れられた「勧善懲悪省」も復活させた。音楽などの娯楽を禁じるとともに、女性の教育や就労の権利を奪い、違反者を厳しく罰した機関だ。恐怖で支配した時代への回帰にならないか。
アフガン政府や駐留米軍への攻撃を繰り返してきたハッカーニ師が内相に就いたことも問題だ。国際テロ組織アルカイダと関係を持つとされる武装集団を率いた人物で、米国は反発している。
33人のうち半数以上が、テロへの関与などを理由に国連の制裁対象となっている。タリバンは、米軍撤収と引き換えに「テロとの決別」を米側に約束した。暫定政権の顔ぶれを見る限り、守ろうとする意思はうかがえない。
アフガニスタンには、国外に退避できなかった外国人やその協力者のアフガン人が多数取り残されている。国際機関で働く日本人や現地職員もおり、日本政府はタリバンとの交渉を続けている。
国際社会は難しい対応を迫られている。主要7カ国(G7)を含む22カ国はオンラインで外相会合を開き、暫定政権への対応を協議した。だが、中国とロシアは参加せず、足並みは乱れている。
現地では、社会の混乱で食料や生活物資がすでに不足し始めている。人道支援が急務だ。
タリバンは、まず女性や少数民族の人権を尊重する必要がある。テロとの決別を明確にした上で、退避希望者の安全な出国を保証し、人道危機回避に取り組むことが不可欠だ。
これらは、実効支配者としてタリバンが果たすべき必要最低限の事柄だ。国際社会は一致団結し、タリバンに圧力をかけ続けなければならない。