ギター1本・マイク1本 MOROHAが表現したコロナ禍の社会
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コロナ禍での挫折や葛藤を表現するバンドがある。アコースティックギターとラップというシンプルな編成で注目を集める「MOROHA」。2人は昨春に発表した「主題歌」に思いの丈をぶつけた。
自分の安全 守るため 払う金
家まで呼び付けたウーバーイーツ
彼らにステイホームって言葉はどう響く?
同じ重みの同じ命
曲を発表するとネット上で「涙が止まらない」「コロナ禍における『主題歌』になった」などのコメントが寄せられ、今なお共感の輪は広がる。緊急事態宣言は繰り返され、社会の混迷が続く。MOROHAが曲に込めた思いを聞きたくて、インタビューした。【佐野格/デジタル報道センター】
コロナ禍の不安や矛盾を表現
6月30日、川崎市のライブハウス。座り込んでギターを弾くUKさん(34)の横で、MCのアフロさん(33)は「主題歌」(https://www.youtube.com/watch?v=xkWUFXfZhgE)を必死の形相でラップしていた。
マスクの中でずっとラップしてた
外に漏らさないようにシャウトしてた
誰にも見せない口元で
見えない夜明けに話しかけてた
未(いま)だにアンサーはないがまだまだ
俺たちの未来は死んじゃいないさ
自分で吐いた前向きな言葉
ガーゼで跳ね返し胸に突き刺した
観客はマスクを着け、声を出さない。ライブハウスには、語りかけるようなラップとやさしいギターの音が響く。コロナ禍で多くの人が抱く不安や社会の矛盾をストレートに表現した「主題歌」。観客はそれぞれの思いをはせているようだった。
曲に込めた思いをMOROHAに聞く前に、彼らの歩みに触れたい。
長野県出身の2人は高校の同級生。UKさんは「僕は高校時代からギターを弾いていて、アフロは当時ラップを始めていた。地元出身の仲いい友達が東京にはあんまりいなくて、アフロと遊ぶときに『一緒に何かやってみよう』とノリでやりだしたのがきっかけでした」。上京後の2008年にバンドを結成。徐々に評価を高め、18年4月スタートの連続テレビドラマ「宮本から君へ」のエンディングテーマに曲が採用されるなど活躍の場を広げている。
コロナ禍を歌った2曲を連続でリリース
ラップはドラムの音などを打ち込んだ曲に合わせるのが一般的だが、生音にこだわるMOROHAの音源はギターだけ。「ジャンルのことは詳しくなくて。ドラムがない中で、どうやってリズムをつけようかといろいろ研究した結果、今の奏法になった」というヒップホップ界で異彩を放つUKさんの演奏と、自らの葛藤や夢、挫折、嫉妬といった感情をむき出しにしたアフロさんのラップは「唯一無二の世界観」と評され、俳優の東出昌大さんら業界内にもファンは多い。
新型コロナウイルスの感染が国内にも広がり始めた昨年3月、彼らは新作「COVID-19」を音楽配信サイト「OTOTOY」(https://ototoy.jp/_/default/p/520930)で発表した。ライブの延期を決断するまでの葛藤、その後に生まれた自分への怒りをストレートにぶつけた。
2月28日ツアーファイナル
熟考の末に決断は延期
行き場ないエネルギー
でもこれでいい これでいい
前向きな決意 固めた
その筈(はず)だった
翌日 某…
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