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(河出書房新社・3135円)
意見の対立、客席から見た演劇論
あいちトリエンナーレ2019に抗議する、ときに怒りに満ちた声を自ら電話越しに受けながら、演出家の著者はこう考えていた。声が聞かれるための空間をつくること――これこそ演劇の仕事であり、パブリックの出発点ではないか。
あいトリの企画展「表現の不自由展・その後」が開幕わずか三日で中止に追い込まれた原因のひとつは、あいトリ事務局等を対象とした組織的な抗議電話、いわゆる「電凸」である。三時間ひたすら罵倒される。家族への危害をほのめかされる。にもかかわらず、県職員はマニュアルにしばられて自ら電話を切ることも、名前を伏せることもできない。他の業務を圧迫しただけでなく、職員の精神的な負担も大きかった。
そこで著者は「Jアート・コールセンター」を立ち上げる。クラウドファンディングで集めた資金をもとに名古屋市内のウイークリーマンションに五本の電話回線を引き、アーティストやキュレーターたち自らがオペレーターとなって、不自由展再開から会期終了までの一週間、抗議の電話を受け続けたのだ。
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