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引っ越してきた時よりもますます緑が濃くなった山脈と渓流の景色を車窓越しに眺めながら、自分はどのぐらい「なんとか」でいられるのかな、と理佐はぼんやり考えた。
そば屋のお客さんに、若いね、と言われても実感はなかった。そういえば高校の友達とは離れてきたんだ、と思うと寂しいような気もしたけれども、どちらかというと文具の倉庫でアルバイトをしていた頃の同僚さんたちの方が懐かしかった。
いちばん仲のよかった光田さんは、ときどき手紙をくれる。最初のやりとりで、電話はないの? とたずねられて、その時に、そうだ私引いてないんだ電話、と理佐は気が付いた。昼間の連絡先はそば屋にさせてもらっているが、そちらにもかかってこないし、今のところ自宅には必要なかったけれども、電話は引いたほうがいいかもしれない、と思う。そういうことに悩んでいる時に、なんとなくやれている自分と律の生活が、実は綱渡りな…
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