増える同時多発テロ後世代 教師は「歴史」をどう教え、伝えるか
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テロリストに乗っ取られた旅客機が米国の中枢部に次々と突入し、2977人が犠牲になった米同時多発テロから20年を迎えた。テロやその後の対テロ戦争を体験した人たちは「あの日」から何を思い、生きてきたのか。
◇
「我々は歴史家である」。米東部ペンシルベニア州ニュービルにある公立高校「ビッグ・スプリング・ハイスクール」(全校生徒約800人)の社会科教師、ローレン・へトリックさん(36)は今月10日、教室に入るとスクリーンにそう記したスライドを映し出した。翌11日に発生から20年を迎える同時多発テロに関する授業。「この言葉を常に頭に置きましょう」と、生徒に呼びかけて授業を始めた。
出席したのは日本の中学3年生にあたる高校1年生23人(14~16歳)。「若い世代にとって同時多発テロは歴史上の出来事。過去の出来事にはさまざまな見方があり、生徒も『歴史家』として証拠を基にその見方を判断しなければならない。証拠自体もすぐに信用してはならないと伝えている」。へトリックさんは授業前、スライドに込めた狙いを明かしてくれた。
生徒には事前に宿題が課されていた。同時多発テロの記憶がある25歳以上に対する当時の思い出のインタビューだ。授業で、生徒が次々と両親などから聞いた話を発表すると、へトリックさんは「相手が当時、学生か社会人か軍人かによっても見方は違う。多くの人から話を聞くことで何が起きたのか理解が深まる」と語りかけた。
イスラムへの偏見、陰謀論への感化を懸念
へトリックさんの念頭にあるのが、一般のイスラム教徒を過激派と結びつける考え方や陰謀論などへの懸念だ。さらに、同時多発テロの背景からその後の米社会の変化、8月末のアフガニスタン戦争の終結までの全てを限られた授業時間で教えるのは難しい。
へトリックさんは「インターネットにはさまざまな情報があふれている。教師の考え方を押しつけるのも間違いだ。生徒が今後も能動的に情報を精査できるようになることを重視している」と強調する。今回の授…
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