九州の高校の「朝課外」に疑問の声 「実施要望が根強い」との指摘も

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福岡市内の公立高3年の子どもがいる保護者から送られてきた封書。「3年生になると夕課外まで・・・もうクタクタです」などと書かれてあった=2021年8月、一宮俊介撮影 拡大
福岡市内の公立高3年の子どもがいる保護者から送られてきた封書。「3年生になると夕課外まで・・・もうクタクタです」などと書かれてあった=2021年8月、一宮俊介撮影

 九州の多くの高校で長年続いている「朝課外(あさかがい)」の見直しを求める宮崎県内の生徒側の動きを記事(7月14日付朝刊)にしたところ、読者からさまざまな声が寄せられた。「事実上の強制」となっていることに現場の教員や保護者から疑問の声が上がる一方、実施を希望する保護者の声も根強いという元職員の指摘もあった。反響をまとめた。

 朝課外とは教育課程に基づかない非正規の授業で、九州の高校で独自に定着。通常の始業時刻より約1時間早い午前7時半ごろからスタートするため、生徒も教員も、その分朝早く起きて登校する必要がある。

 宮崎県立の進学校で勤務する30代男性教諭は「教員の立場からも朝課外の廃止を求めたい」と電話で訴えてきた。共働きで自身の子どもがまだ小さく「保育園は午前7時ごろ開園で、朝課外を午前7時半に始めるには午前7時20分までには学校に到着しなければならない。保育園に子どもを預けた後では間に合わない」と説明。「子育てが一段落したか、協力してくれる祖父母がいるか、などでないと無理だ」と話した。

 朝課外が負担になっているという意見は保護者からもあった。福岡市東区にある公立高3年の子を持つ親から届いた封書には「毎朝5時半に起き、眠たい目をこすりながらイヤイヤ出ていく姿をずっと見てきた。帰りは部活、帰宅後は多くの宿題、寝るのはいつも0時過ぎ……。親も毎日早起きして弁当作り。子どもは『分かる内容の授業に朝早く起きて行くのが嫌。選択制にしたらいいのに』と言っていた」とあった。

 さらに、3年生になると「夕(ゆう)課外」も始まったという。「もうクタクタ。朝課外をやめて土曜日授業にするなどもう少し子どもたちに余裕を持たせてほしい。今では勉強の仕方も多様化している。自分に合った勉強法を自分で選び、考える力を高校で養ってほしい」と訴えた。

 一方、福岡県内の高校で事務職員だった男性(56)はメールで「大学進学希望者が多い高校では保護者の意向が働いている場合が多い。『金は出すので、我が子を何としても大学に行かせてほしい』と願う保護者が少なくない。だから、学校側が課外授業を廃止、縮小しようとすると、保護者から『課外授業をやめずに続けてほしい』という要望が出ることになる」などと明かした。

 多くの高校で朝課外はPTAが学校に依頼する形で実施され、教員の人件費はPTA会費から賄われていることが多い。塾や予備校が少ない地方で家計に負担をかけない学力向上策として各地で数十年前に始まったとされる。宮崎県内の普通科高校17校に聞くと、朝課外を続けている学校からは「PTAや保護者からの要望が根強くある」との回答が目立った。

 だが、長崎市で学習塾を営む佐々木大さん(57)は手紙に「ほとんどの保護者は必須の授業だと思っている」とつづり、PTAの依頼で実施されていることが理解されていない点を問題視。メールで連絡を取ると「始まった当時は多くの生徒に学習機会を広げる素晴らしい取り組みだったが、いつしか『続けること』ありきで何十年もたってしまった。生徒たちは『学校にいけば何とかなる』と能動性を失い、自らの計画を考える力が失われてしまった印象だ」と返信がきた。

 大分県では、朝課外を続けていた公立高9校すべてが2018年3月末までに各校判断で廃止。県教委によると、「教員の働き方改革」「生徒が主体的に学ぶ時間を確保するため」などが理由に挙がったという。

 前出の元事務職員の男性は「課外授業で学力が向上しているのか。この根本的な問題がよく検証されていないように思う。少なくとも『全員一律に課外授業』という取り組みが個々の学力向上にとってベストでないのは明らか。課外授業を実施していない自治体との進学実績を比較研究するなどした方がいいのではないか」と指摘する。【一宮俊介】

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