特集

東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

特集一覧

震災10年半 被災地、突出する高齢化 「老老復興」に担い手息切れ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
スーパーや薬局などがそろう商業施設「アバッセたかた」で送迎車を降りる利用者=岩手県陸前高田市で2021年9月7日午前9時31分、日向米華撮影
スーパーや薬局などがそろう商業施設「アバッセたかた」で送迎車を降りる利用者=岩手県陸前高田市で2021年9月7日午前9時31分、日向米華撮影

 東日本大震災から10年半が経過した被災地。人口減は全国的な課題だが、岩手県沿岸12市町村の人口は震災前より約4万7000人も減り、減少幅が突出している。地域の高齢者向け送迎車の担い手の多くは60代以上、高齢者の暮らしを支えるボランティアも高齢者――。人口減とともに顕著な高齢化にも直面する被災地では、「老老復興」ともいえる状況が起き始めている。【日向米華、山田豊】

地域の支え「若い力巻き込まないと」

 岩手県沿岸部では今、高齢の地域住民の移動を同じ地域住民が支えている。ただし、支える側も若くはない。

 9月7日。陸前高田市横田町の山あいをシルバーのワゴン車「らいじん号」が縫うように走っていった。地域を回る送迎車で、料金は無料だ。毎週火曜、住民を市中心部の商業施設や病院などに送り届ける。乗客の荻原タキ子さん(85)は1人暮らしで、「タクシーで買い物に行くと月に1万円ほどかかる。送迎車は本当に助かる」と話す。

 らいじん号は地元住民有志による会が運行する。4月から週1回1往復の運行を始め、ガソリン代などは陸前高田市の地域交付金で賄う。運転手はボランティア12人が交代で担っている。会の村上豊繁代表(51)は「移動手段がないと、高齢者は家にこもりがちになる」と事業の意義を語る。とはいえ会のメンバーは50~60代だ。村上さんは「いずれ自分たちも利用する側になる。若い力を巻き込み、地域で支えあえるか。それが事業継続の鍵になる」と言う。

 大船渡市三陸町吉浜でも毎週金曜、地区の助け合い協議会と社会福祉法人が高齢者のための送迎車を運行する。月会費1000円で利用できる送迎車。車両と運転手は社福法人が出し、地域住民が添乗スタッフを担う。こちらも、スタッフの多くは60代だ。こうした状況について、NPO法人「いわて地域づくり支援センター」の若菜千穂常務理事は「送迎車を運営する住民もやがて高齢化する。住民共助が最後の手段ではない」と述べ、行政の関与の必要性を指摘する。

 交通手段が限られる地方では、路線バスが重要な…

この記事は有料記事です。

残り2220文字(全文3074文字)

【東日本大震災】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集