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この国に、女優・木内みどりがいた

「アベ政治を許さない」と書かれたプラカードを国会前で掲げた女優、木内みどりさん。その足跡をたどります。

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この国に、女優・木内みどりがいた

自己奪還とシスターフッドの物語/43

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朗読劇「ヴァギナ・モノローグ」で両手を上げ、女性器の名称を叫ぶ木内みどりさん(手前)=東京都豊島区で2014年4月4日(アムアーツ提供)
朗読劇「ヴァギナ・モノローグ」で両手を上げ、女性器の名称を叫ぶ木内みどりさん(手前)=東京都豊島区で2014年4月4日(アムアーツ提供)

 前回紹介したように、「V-DAY」での朗読劇「ヴァギナ・モノローグ」への出演は、無報酬が条件となっている。しかも、世界中で演じられてきたこの上演台本には、タブーからの解放を目指し、出演者が自国語で女性器の名称を叫ぶ場面もある。その役を木内みどりさんが引き受けた。出演依頼にどう応えたのか。【企画編集室・沢田石洋史】

きっかけはドイツの劇作家の作品

 この朗読劇を企画した演劇プロデューサーで日本大学芸術学部演劇学科の奥山緑教授は、こう振り返る。

 「木内さんの過去のいくつかの舞台を見てきました。蜷川幸雄さんの演出で1992年に上演された『三人姉妹』のナターシャだったり、2006年の『ガラスの動物園』のアマンダだったり。なかでも、同じ06年の『皆に伝えよ! ソイレントグリーンは人肉だと』は、芝居がうまいだけではなく、演劇に誠実に向き合い、人としての懐の深さにあふれていた。いつか機会があったら、出演を依頼したいと思っていました」

 「皆に伝えよ!」はドイツ現代演劇の革命者とも言われる劇作家・演出家のルネ・ポレシュさんの作品。自身の演出で、東京都内の劇場で上演された。73年公開の米国映画「ソイレント・グリーン」に着想を得ており、人口増加によって食糧不足に陥った近未来が舞台となっている。政府はソイレント社の固形食品を配給していたが、そのうちの緑色の食品は人肉だった――という設定だ。

芝居のほとんどが「囁き」で構成

 どんな演出だったのだろうか。舞台の雰囲気を感じてもらうため、演劇評論家の結城雅秀さんの劇評を紹介したい。以下、演劇雑誌「テアトロ」(06年6月号)からの抜粋。

 <とにかく相当に変わっている。何が変わっているかというと、芝居の殆(ほと)んどが「囁(ささや)き」によって構成されている。登場する役者四人(木内みどり、中川安奈、池田有希子、長谷川博己)は、マイクロフォンを通じて、囁いたり、叫んだりするのである。それも、九割ぐらいの台詞(せりふ)は囁きであるから、役者にとっては相当に困難を伴うものであったと思われる。…

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