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老化進む太陽光発電所、「野良ソーラー」化懸念 管理ビジネスは活況

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山の斜面に設置されたメガソーラー。パネルの間から雑草が顔をのぞかせる=埼玉県横瀬町で2021年7月5日、岡田英撮影
山の斜面に設置されたメガソーラー。パネルの間から雑草が顔をのぞかせる=埼玉県横瀬町で2021年7月5日、岡田英撮影

 温室効果ガス排出量の大幅削減に向け、政府が導入拡大を急ぐ太陽光発電。住宅の屋根へのパネル設置などに注目が集まる一方で、稼働中の発電所はじわじわと「老化」が進む。国内で大規模発電所を新設する余地が限られる中、できるだけ発電効率を下げず、既存設備を長く使い続けるためのビジネスが活況を呈している。【岡田英、信田真由美】

想定より速い劣化のスピード

 成田空港の南東約5キロ、物流倉庫の建設予定地だった千葉県芝山町内の広大な敷地に、約1万8000枚の太陽光パネルが並ぶ。よく見るとパネルのあちこちに白い点がある。

 「鳥のふんです。普通は雨で流れますが、放っておくと汚れがたまって『ホットスポット』が発生します」。この大規模太陽光発電所(メガソーラー)を運営する物流施設開発会社「SBSアセットマネジメント」(東京都墨田区)の大城雅良投資管理部長が説明した。

 太陽光パネルの「ホットスポット」とは、鳥のふんや落ち葉が付着するなどして電気抵抗が局所的に高まって発熱する現象だ。発電効率の低下だけでなく、パネルの故障や火災を招くこともある。

 この発電所の稼働開始は2013年。大城さんによると、5年目ごろからホットスポットやさび、汚れが目立つようになった。日射量当たりの発電量を「発電効率」として経年変化を調べると、運転7年目の19年には1年目の約1割減に。売電収入に換算すると年1000万円以上の減少だった。

 同社は全国14カ所で太陽光発電所を運営する。発電効率は平均年1・6%のペースで低下し(18年末時点)、汚れやホットスポットの影響と考えられた。芝山町の施設など9カ所でパネルを水で洗浄すると、8カ所で発電効率が改善した。

 30年度までに温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する政府の目標を達成するには、太陽光が重要な役割を担う。環境省は現行の30年度の導入目標(6400万キロワット)に2000万キロワット上積みする案を公表している。

 一方、メガソーラーは、12年の固定価格買い取り制度(FIT)導入で各地で一気に建設が進んだが、新設のペースは失速した。発電した電気をFITで20年間、同一価格で電力会社に買い取ってもらえるが、認定年度が遅くなるほど買い取り価格が下落してビジネス上のうまみが減ったためだ。出力1メガワット(1000キロワット)以上の設備のFIT認定件数は、13年度の3904件が最多で、19年度はわずか58件だった。

 導入を進めようにも、国内では広大な敷地を必要とするメガソーラーの適地は減り、災害リスクが指摘される地域などでの建設も避ける必要がある。そのため、既存の設備を効率的に使い続ける重要性がこれまで以上に増している。

 だが、劣化のスピードが従来の想定より速いことが最近の研究で分かってきた。太陽光発電所の事業計画を立てる際、パネル自体の劣化を考慮し、発電能力が年0・5%ずつ下がると見込むのが一般的とされる。しかし、…

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