「スクールカースト」といじめ 雨宮処凛さん・武田砂鉄さん対談/下

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
武田砂鉄さんと語り合う雨宮処凛さん=東京都杉並区で2021年9月1日、藤井太郎撮影
武田砂鉄さんと語り合う雨宮処凛さん=東京都杉並区で2021年9月1日、藤井太郎撮影

 いじめられた経験のある作家の雨宮処凛さんと、社会問題について積極的に発信しているライターの武田砂鉄さんの対談。下は、雨宮さんがいじめの後遺症から、実家に帰っても一人で外出できないことや、今いじめられている子どもに伝えたい重要なこと、背景にある学校文化の問題、大人がすべきことなどへと話題が広がった。【構成・鈴木英生、小国綾子】

あなたを大切にしない場から「逃げろ」

――今、いじめられている子どもたちへのメッセージをお願いします。

 雨宮 「あなたを大切にしてくれない場所には、いてはいけない」に尽きます。逃げろと同義です。私は中学生の頃、いじめを受けても逃げられず、本当につらかった。企業の過労死や家庭内暴力(DV)も同じで、まずは緊急避難として「逃げろ」です。

 ただ、「いじめられている人は悪くない。逃げていい」というメッセージは大事だけど、例えば不登校になると教育を受ける権利が損なわれる。加害側は変わらぬ生活なのに、なぜ被害者だけが損をしないといけないのか。せめて学校は、いじめる側といじめられる側を何らかの方法で「分離」させるべきだと思います。

 学校という空間では、たまたま同じクラスや部活動になっただけの人間同士の関係が、子どもたちを取り巻く世界のすべてになりやすい。刻々と変わる教室の空気を読み、自分の属する「スクールカースト」に合わせた振る舞いをしないと、一気に人権を失う。中学生の頃は、悪目立ちしないように必死でした。姿勢、呼吸、給食の食べ方……。髪の毛の一本でも、「変だ」と思われたらアウト。こういう空気のきつさは、今の学校でも年々強まっているように感じます。

 武田 自分の高校時代、いつも1人で過ごしている同級生がいました。ある時、話しかけてみたら、実は彼、高校生なのに競馬にはまっていた。彼にとっては興味のほとんどが競馬で、学校では勉強だけをしていればいい、と思っていた。だから、クラスでは「変なやつ」として放っておかれ、いじめられることはなかった。

スクールカーストの「圏外」に出る

――その彼のような割り切りは、難しいですよね。

 雨宮 いわば、スクールカーストの「圏外」ですよね。かなりの孤高キャラを自分で作らないと、「圏外」にはなれない。多くの場合、最底辺キャラにされて、いじめの標的になる。私は高校のとき、校外のバンギャ(ビジュアル系ロックバンドのファン)友だちとだけ付き合って「圏外」になれた。

 武田 外に友だちがいるから、校内で孤高でも平気だったと。

 雨宮 むしろ「あなたたちとは違う」と思えて余裕が生まれます。そもそも、中高生は、友情の維持・進化・発展が生活の中心になりがちじゃないですか。

 武田 すべてとさえ言えます。

 雨宮 これが不幸。友情が目的化すると、誤差みたいな小さなマウンティング(自分の優位性を示す態度)をし合ったり、「どうして一緒にトイレに行ってくれないの?」みたいな束縛が始まったりします。私は、大人になってからはそういう友だちがいません。いるのは、一緒に「推し活」(バンドなどのファン活動)や社会運動をする友だちだけ。目的は好きなバンドを応援することや貧困をなくすことで、友情自体ではない。視線が相手ではなく同じ方を向く人同士の緩やかな連帯です。

 武田 今は、SNS(ネット交流サービス)でそういう友だちを作りやすいですしね。SNSのほぼ唯一の利点かもしれません。となると、バンギャ的なものを探すことができれば……。

 雨宮 でも、10代くらいだとバンギャにも女同士のマウンティングがたまにあって……。そこからも「圏外」になろうと、右翼団体に入ったり、あげくに北朝鮮やイラクまで行き、「悪の枢軸を訪ねて」なんて本も書いて。おかげで、完璧な「圏外」になりました(笑い)。

SNSは逃げ場を奪うもろ刃の剣

――武田さんは中高生時代、クラスでどんな立場でしたか?

この記事は有料記事です。

残り3205文字(全文4805文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集